「街場の天皇論」内田樹著
天皇は「シャーマン」としての機能をもち、戦地を訪れて死者を慰霊しているが、日本人の死者だけでなくその地で死んだすべての人を慰霊している。この慰霊こそが天皇の本務なのに、それができなくなりつつあるので「生前退位」が必要となったのだ。
そういう死者たちへの思いが政治的エネルギーの源泉になっていることを利用しているのが政治家だが、安倍晋三が背負っているのは天皇のような「すべての死者」ではなく「岸信介という生々しい死者」である。だが、日本のリベラル・左翼・知識人は未来志向で、過去の死者をあまり顧みないため極右に勝てないという。
天皇制と民主国家との共生を考える天皇論。
(東洋経済新報社 1500円+税)