「サル化する世界」内田樹著
日本の目の前には、中央統制を組み合わせて劇的成功を収めた「チャイナモデル」と、市民が自力で軍事独裁を倒して民主化を達成し、経済的成功をも収めた「韓国モデル」がある。これに対する嫉妬から「嫌韓嫌中言説」が生まれたと内田はみている。
この2つのモデルの二者択一を迫られた日本の政官財メディアの相当部分が、民主政体の韓国モデルより強権政体の中国モデルのほうが望ましいという選択をした。嫌中言説の抑制と嫌韓言説の高進が同時に起きたのはそのためである。安倍政権は無意識的に中国の強権政治に憧れており、安倍が目指す「改憲」は単なる「非民主化」である。「非民主化」と市場経済を組み合わせることで、中国のような劇的成功が起きると本気で信じている。
近視眼的な思考が蔓延する社会への鋭い警告。
(文藝春秋 1500円+税)