第91回アカデミー賞下馬評 “本命”にセクハラ発覚で大混戦
■漁夫の利は…
「グリーンブック」に代わり作品賞争いのトップに躍り出たのが、メキシコの誇る映画作家アルフォンソ・キュアロンの半自伝的作品「ROMA/ローマ」だ。メキシコで暮らす普通の人々の日常を丁寧に描写して、米国の批評家たちからも絶賛。国境の壁問題など、国民的関心が高い隣国の物語という点も有利で、このまま受賞となるのか。
「この数年でだいぶ是正されたとはいえ、オスカー会員のほとんどは高齢の白人男性です。保守的な彼らがNetflix配信のみの本作を『映画』と認め、最高賞を与えるかがカギでしょう。また作品賞の投票方式は独特で、ド本命でもアンチがいる作品より、万人がそこそこ評価する2、3番手のほうが受賞しやすい。監督のセクハラ騒動でケチがついた『グリーンブック』よりは有利です。とはいえ、作品賞は監督ではなく製作者に与えられる賞。『グリーンブック』は製作者(脚本も兼任)の父親の実話で、亡き父への愛があふれる感動物語だと抜群の評価。メンバーが重複していて投票方式も同じ“米・製作者組合賞”を受賞しているのも大きい。このまますんなり受賞もあり得ます」(前田有一氏)
下馬評のほうがはるかに面白い今年の米アカデミー賞。栄冠は誰の手に――。