懐かし映画の最新版!「シン・ウルトラマン」「トップガン」50、60代元気になる見どころを解説

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 懐かしの映画の最新版が大ヒットしている。「シン・ウルトラマン」は公開30日で興行収入34億円を突破。「トップガン マーヴェリック」は同17日で、興行収入43億円に上っている。ダブルで見た50代、60代も相次ぎ、「面白い」「もう一度見たい」と評判だ。長引くコロナ禍に加え、物価高なども重なり、国内ムードは決してよくない。興奮の2作で元気を出そう。映画通イラストレーターのクロキタダユキ氏に寄稿してもらった。

 ◇  ◇  ◇

■「シン・ウルトラマン」の心憎い演出

 絵の具が入り交じったタイトルが流れるオープニングに「おや?」と思った。一家に1台しかなかったテレビを食い入るように見つめた「ウルトラQ」シリーズ「ウルトラマン」の冒頭シーンに重なるからだ。

 社会で「新人類」と揶揄されたボクら50代は、バブルで遊びまくり、今もバブル感が抜けず、下の世代からはお荷物扱いだが、そこに現れた「シン・ウルトラマン」。タイトルは一瞬、「シン・ゴジラ」と映り、こちらに。そう、本作は「シン・ゴジラ」の世界観の延長線上にある。この心憎い演出、タマランチ会長。

「空想特撮映画」と冠しているのもいい。思い返せばあのころ、雑誌「小学○年生」の人気付録「怪獣図鑑」を読み漁っては、友達と怪獣談議にふけっていた。無垢でけがれのなかった、あのころがよみがえる。出世も収入も天井が見え、追いかけた女は去っていく。そんなオジサンの心をわしづかみにする。

 ネットでは、リアルさに欠けるという批判もあるが、コロナ禍の今、怪獣を「禍威獣」に書き換えたのはある意味、風刺に富む。そこに立ち向かう精鋭は「禍威獣特設対策室」、略して「禍特対」に所属。「ウルトラマン」の「科学特捜隊」「科特隊」のもじりに思わずニンマリ。

■初代は着ぐるみを再活用。本作にも類似性が

 そのメンバーの一人がパゴスやネロンガ、ガボラの類似性を指摘する。初代「ウルトラマン」では、制作サイドが経費節減で怪獣の着ぐるみを再活用。怪獣ジラースがゴジラに襟をつけてリメークしていたことのオマージュと分かると、「そうきたか」と膝を叩いてしまう。しかも初代をアレンジしたBGMを聞きながらで、泣けてくるのだ。

 カラータイマーなき姿は、初代の生みの親の一人・成田亨氏のデザインがベース。それに賛否両論あるにせよ、長澤まさみ演じる浅見が思わず「きれい」とこぼすように、スタイリッシュなフォルムが美しい。

 さて、地球を守るシン・ウルトラマンは、外星人メフィラスの営業を受ける。「郷に入っては郷に従え」「備えあれば憂いなし」などと故事を織り交ぜたセールストークで、未知のパワー「βシステム」の売り込みを受ける。

 その現場が居酒屋で、呉越同舟の酒を酌み交わしながらときた。まるで30~40年前の得意先との飲み会のようなシーンは、ウルトラセブンのメトロン星人が、安アパートでセブンと対峙する光景とダブる。結局、オジサンにドンピシャの映像は、交渉決裂となって、セールスを仕掛けた方が「割り勘で」。オゴるつもりでだれかを誘いつつ、雲行きが怪しくなると、割り勘に切り替える上司、いるよ、いる。

■長澤まさみ演じる浅見が投げかける言葉

 もちろん、ウルトラマンと禍威獣を巡る攻防が見どころだ。その詳細は映画を存分に楽しんでもらうとして、浅見役の長澤まさみがシン・ウルトラマンに投げかけるこの言葉にジーンとくる。

「行ってらっしゃい」

 絶対に帰ってくるぞー! スクリーンを見つめていた56歳のボクは、心の中でそう叫んだし、周りの同世代もきっとそうだったはずだ。

「トップガン」窓際中年が表舞台に返り咲き、作戦を実行

 なんといっても、トム演じるマーヴェリックの立ち位置だ。戦闘機パイロットとしてイケイケだった前作とは一転、むちゃぶりを上司に疎まれ、昇進できないでいる。腕は確かでも、孤独。この設定が、まず中高年サラリーマンの共感を誘うだろう。

 前作では、自ら招いた事故で親友グースを亡くす。つらい過去を引きずった設定も人間味を補強する材料だし、何よりラストに響く。

 中ぶらりんのマーヴェリックをトップガンに呼び戻したのが、空軍トップのアイスマン。若い時のライバルを、教官として招くのだ。病気で体が不自由になって会話が困難になったトップがタブレット画面に「過去は水に流せ」とつづるのは、マーヴェリックの実力を認めればこそで、見ているこちらもこみ上げてくるものがあった。

 窓際の中年が表舞台に返り咲くと、若き精鋭を指導。その中には、グースの息子もいる。父の死も影響し、教官に反発するが、静かに、かつ自分の息子のように接する。マッハの世界で判断の遅れは、時に取り返しのつかないミスを生む。親友の息子が慎重気味なことを見逃さず、「考えるな。行動しろ」とだけ告げてのアドバイスは、苦難を乗り越えた男のセリフだろう。

 部下を温かく見守り、説教を垂れず、自慢話もしない。若いころ、説教オヤジにムッとして、こんな先輩を理想としたはずだ。今の自分への戒めにもなっている。

 そんな中年が輝きを見せるキッカケが、かつてのライバル・アイスマンの死だ。敵への攻撃方法を巡り、新しいトップとの間で揺れた。

 出撃から標的まで「4分」を打ち出すトップに対し、中年は「2分30秒」を主張。結局、中年のプランは「不可能」と却下されるが、そこは腕達者。自らF/A-18に乗り込み、命からがらのテクニックを生徒たちに披露した。その技術に上層部も舌を巻くのだ。

■本物の戦闘機でGを受ける大迫力

 これを受けて腕達者をキャプテンに作戦実行。攻撃対象は、谷底すれすれを飛び、高い山を飛び越えた盆地にある小さな的。それでピンときた人もいるはず。そう、SF映画の金字塔「スター・ウォーズ」1作目のクライマックスを彷彿とさせるのだ。1978年の公開当時、大スクリーンで圧倒された人は、当時の興奮がまざまざと思い出されること間違いなしだろう。

 しかも本作では、トムをはじめ出演者が実際に本物の戦闘機のコックピットに座り、まともにGを受けながら撮影されている。その迫力たるや、スクリーンからビシビシと伝わってくるのだ。

 かくして、作戦は成功する。しかし、相棒の息子が敵に狙われていることを察知したマーヴェリックは、自らの機体を盾にして息子を守る。それで撃墜され、一人取り残されたところへ、やがてその息子が。

「なぜ戻ってきた!」と冷静だった教官は、初めて激怒すると、こう言い返された。

「あんたは言っただろ。考えるな。行動しろって!」

 ここから一気にラストに向かって盛り上がる本作は、前作と同様にケニー・ロギンスの「デンジャー・ゾーン」の旋律で始まる。これを読んだ方なら、あのフレーズが頭の中でこだましているはず。さあ、元気をもらいに劇場に行こう。

(イラスト・文=クロキタダユキ) 

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