“神の手”解説 「脳動脈瘤」2大治療メリットとデメリット
「『開頭クリッピング術』とコイルを利用した『脳血管内治療』の手術件数比率は、だいたい2対1です。ただ、クリッピング術は下降の傾向にあり、逆にコイル術が上昇の機運にあります。私の場合、どちらの手術を選択するかは、まず患者の『安全性』『確実性』を最優先にして判断しています」
コイル塞栓術がクローズアップされたきっかけは、破裂脳動脈瘤に対して両者を前向きに比べたISAT試験。「どちらを選ぶか明確でない動脈瘤には、コイル塞栓術を選択すべき」と結論づけたからだ。
■両方の技術を持つ医師が理想
しかし、その後ISAT試験にはいくつかの疑問が投げかけられた。たとえば「ISATに用いられた開頭クリッピング術の成績が日本のそれに比べて大きく劣っている」「発症から手術まで3日以上も経過していた」などだ。
その後も、両者を比較した国内研究でコイル塞栓術の優位性が報告されてはいるが、急上昇しているわけではない。
「クリッピング術は再発が約1%と極めて少なく、多彩な形状でも手術が可能です。しかも、治療中に出血してもすぐに対応できます。開頭するため手術の痛みが伴い、手術者によって術後のけいれんや感染などを起こすリスクも高くなりますが、根治手術であることから、クリッピング術を選ぶ医療機関が多いのです」