ふわふわ卵サンドは薄味だからこそ塩分を控えて豊富な栄養素をいただく
卵白のタンパク質と卵黄の油脂は生命発生のためのエネルギー源かつ資材源
卵は完全食。生命の誕生に必要な栄養素(アミノ酸、脂質、糖質、ビタミン、ミネラルなど)がすべて十全に含まれている。タンパク質の良し悪しを示すアミノ酸スコアは満点。卵白はタンパク質のかたまりで、卵黄は油脂のかたまり。どちらも生命発生のためのエネルギー源かつ資材源。鶏にとっては災難だが、人にとってこれほど有用で安価な食材もない。
卵黄の構造は実はとても複雑。内部は、タンパク質の網目構造と脂質が交互に重なったミルフィーユ構造からなっている。黄身のコクは、大量に含まれるレシチンという油脂の舌触りによる。レシチンは、鶏にとっては細胞膜の材料となるが、食べる側の人間にとっては、コレステロール低下作用がある。
卵黄の色は餌に含まれるカロテノイド(植物由来の黄色色素)がどれくらい移行したかによる。トウモロコシ、オレンジの皮などをたくさん与えると濃い黄色になる。少ないと白っぽくなる。
ふわふわトロトロの絶品オムレツを作るには、ちょっとした食品の科学がいる。卵白をかき混ぜるとき、いかに空気を取り込むかがふわふわ感を決める。そして白身が固まる温度(60度台)と、黄身が固まる温度(70度台)の中間で微妙に火を止めるとトロトロの出来上がり。
▽福岡伸一(ふくおか・しんいち)1956年東京生まれ。京大卒。米ハーバード大医学部博士研究員、京大助教授などを経て青学大教授・米ロックフェラー大客員教授。「動的平衡」「芸術と科学のあいだ」「フェルメール 光の王国 」をはじめ著書多数。80万部を超えるベストセラーとなった「生物と無生物のあいだ」は、朝日新聞が識者に実施したアンケート「平成の30冊」にも選ばれた。
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