アビガン開発者・白木公康氏に聞く 新型コロナとの戦い方

公開日: 更新日:

「早期に投与すれば重症化を避けられる」

 新型コロナウイルス感染症の治療薬候補として注目される、国産の抗インフルエンザウイルス薬「アビガン」(一般名:ファビピラビル)が、5月中にも薬事承認されそうだ。安倍首相が同4日の記者会見で明らかにした。同剤の共同開発者である富山大学名誉教授の白木公康氏(千里金蘭大学副学長)に取材した。

 ◇  ◇  ◇

 ――なぜ抗インフルエンザ薬のアビガンが新型コロナウイルス感染症に効くのですか?

 インフルエンザや新型コロナのウイルスは遺伝子にDNAでなくRNAを持っているからです。アビガンは、細胞内に侵入したウイルスが、RNAの複製に必要な酵素「RNAポリメラーゼ」によく似た構造をしています。ウイルスが間違えてアビガンを取り込むと、RNAのコピーができなくなり増殖が止まるのです。RNAウイルスは同じような仕組みで増殖するものが多いため、昔からインフルエンザ以外のRNAウイルス感染症にもアビガンは有効だと考えられてきました。実際、2014年には、ギニアでエボラ出血熱の患者に投与して死亡率を下げたとの研究報告があります。

 今回、中国政府が、すぐに使うために7万の既存薬からアビガンを新型コロナウイルス感染症の薬候補として選んだのはこうした理由からです。

 アビガンが新型コロナウイルスに効くのは中国の論文からも明らかです。実験室レベルの研究ではエボラと同じ用量での効果が認められていますし、臨床試験でも「アビガン治療群では平均4日でウイルスが消失し、対照群では平均11日を要した」と報告されています。解熱までの期間や咳が緩和する期間の短縮が確認され、日本で心配されている副作用についても「明らかな副作用も見られず安全性は高い」と書かれているのです。

 にもかかわらず、日本の感染症の専門家は「アビガンの有効性については判断できない」とするのはなぜでしょうか。少なくとも、「中国では有効性が確認されているが、わが国では判断できない」というべきではないでしょうか。

 ――抗インフルエンザ薬のアビガンが効くのなら、タミフルやゾフルーザなども効くのですか?

 コロナウイルスとインフルエンザは違うウイルスなので、タミフルやゾフルーザは効きません。しかし、両ウイルスはRNAウイルスなのでアビガンは効きます。マウスの実験ではタミフルは3日延命しますが、その後ほぼ死んでしまいました。ところがアビガンは死にません。同じ抗インフルエンザ薬でも、効く仕組みが違うからです。

 しかもアビガンは感染した細胞内でRNAウイルスを作らせませんから、薬剤耐性ウイルスは生まれません。

 ところが、タミフルやゾフルーザはウイルスが感染した細胞内で限界になるまで増えた後で効き始めるため、その間に薬剤耐性のあるウイルスが生まれる可能性があるのです。

 アビガンがRNAウイルスを合成しないということは、ヒトの免疫細胞からRNAウイルスを攻撃するときに必要なサイトカイン(炎症を起こす物質)も分泌されないということです。

 サイトカインが出ると熱が出ます。ほとんどRNAが合成されないときにアビガンを投与すればそれほど熱は出ません。しかし、感染した細胞内でRNAのコピーが目いっぱい作られた後に効くタミフルやゾフルーザでは高い熱が出るし、その期間も長くなるのです。

 新型コロナウイルス感染症は重症になるとサイトカインストームが起きるのではないか、との議論があります。サイトカインストームとはサイトカインが過剰に分泌され、全身の臓器にダメージを与えることを言います。しかし、そんな議論はアビガンを早期に使えば、病変も小さいので不要です。

 いずれにせよ、投与のタイミングさえ間違わなければ現時点ではアビガンが最も効果があると思います。

 ――しかし、中国は最初にアビガンの効果を認めながら、後になってアビガンを推奨した論文を引き下げたりもしています。

 この論文のデータに問題はなく、データはそのまま再掲載されました。この経緯については、半年もすれば明らかになると思います。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    兵庫県・斎藤元彦知事を追い詰めるTBS「報道特集」本気ジャーナリズムの真骨頂

  2. 2

    前代未聞の壮絶不倫・当事者のひとりがまたも“謎の欠場”…関係者が語った「心配な変化」とは???

  3. 3

    今田美桜「あんぱん」に潜む危険な兆候…「花咲舞が黙ってない」の苦い教訓は生かされるか?

  4. 4

    柴咲コウの創業会社が6期連続赤字「倒産の危機」から大復活…2期連続で黒字化していた!

  5. 5

    男性キャディーが人気女子プロ3人と壮絶不倫!文春砲炸裂で関係者は「さらなる写真流出」に戦々恐々

  1. 6

    高嶋ちさ子「暗号資産広告塔」報道ではがれ始めた”セレブ2世タレント”のメッキ

  2. 7

    世耕弘成氏「参考人招致」まさかの全会一致で可決…参院のドンから転落した“嫌われ者”の末路

  3. 8

    「羽生結弦は僕のアイドル」…フィギュア鍵山優真の難敵・カザフの新星の意外な素顔

  4. 9

    「フジテレビ問題」第三者委員会の報告会見場に“質問できない席”があった!

  5. 10

    「Nスタ」卒業のホラン千秋にグラビア業界が熱視線…脱いだらスゴい?