自動車の「ペダル踏み間違い」事例で読み解く事故リスク…奈良や北海道で暴走相次ぐ

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■ブレーキの手前でかかとを固定するのが基本

 ペダルの踏み方と体の関係については、運転手のクセも影響する恐れがあるという。

「ペダルを踏むときは、ブレーキペダルの手前にかかとを置いて、アクセルペダルを踏むときはそこを支点につま先を右に傾けるのが基本です。ところが、膝を上げて踏み分けるクセがある人は支点がズレるため、パニックなどが生じたときに踏み間違いをしやすいのです」

 リポートで紹介された③では、60代の男性がAT普通乗用車で路外施設から道路に出ようとして事故を起こしている。

●左折して道路に出るため出入り口に向かって前進した。

●歩道の手前で停止して安全確認をしようとブレーキを踏んだ。

●ところが、ブレーキから足を滑らせてアクセルを踏み込んだため、車が急発進。右方向から進行してきた車と衝突し、その結果、別の1台を含む3台が絡む事故になった。

■サンダルやヒールは安全運転義務違反に

 実はこの男性が履いていたのはサンダルで、乗車前には水たまりを歩いていた。サンダルの底が濡れていたことがブレーキペダルから滑ってアクセルを踏み込んだ要因と考えられる。

「道路交通法第70条には安全運転義務が定められていて、ハンドルやブレーキなどの操作を確実に行うことが明記されています。サンダルやハイヒール、スリッパ、ゲタなどで事故を起こすと、安全運転義務違反を問われる可能性が高い」

 サンダルだった男性は水に濡れて滑りやすい状況だったことに加え、かかとの固定も不十分だった可能性もある。女性のハイヒールはかかとの接地面積の小ささから、かかとがぐらつくことが危険につながると考えられるという。

 高齢者は持病や薬の影響などで意識が不鮮明になることも指摘され、それが事故を招くともいわれるが、こうしてみると、ペダル踏み間違い事故は決して高齢者だけのトラブルではないことが分かる。

■65歳以上の多重事故率は4割前後

 普通車以上の免許を持つ人口10万人当たりの死傷事故件数を見ると、車両相互事故では24歳以下が9.6件でトップ。2番目が75歳以上の7.8件で、ほかの年齢は大体2~3件だった。

 さらに多重衝突事故率を加味すると、その割合は24歳で34%と高いが、その後、年齢とともに減少し、55歳以上で上昇し、65歳以上では4割前後になっている。

「若い人は運転技術の未熟さでペダル踏み間違いをしても、1度ぶつかるとそこで止まれる傾向があるのに対し、高齢者は衝突を繰り返して多重事故を招く傾向があることがうかがえます」

 こうした事故が多発していることで、国産車の場合、新型車は21年11月から衝突被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)の装着が義務だ。自動ブレーキは、搭載されたカメラやセンサーで障害物や先行車、歩行者を検知し、それらとの距離から危険を察知すると、警告音などで運転手にブレーキ操作を促す仕組みで、操作がなければ自動で衝突を回避する。自動ブレーキに加えて、踏み間違いを検知して急発進を抑制する仕組みもあるが……。

「国産車の場合、21年11月を期限とする装着義務はモデルチェンジされた新型車で、モデルチェンジを行わず継続生産される継続生産車の期限は25年12月。それが輸入車だと、新型車は24年7月で継続生産車は26年7月というスケジュールです。一方、車の保有期間は平均7年で、10年超も2割を占めますから、事故を防ぐような自動ブレーキ装置がない車が多く走っているのが現実です。そういう車で不安な人は、急発進抑制装置は後づけできますから、後づけするか、装置を備えた車に買い替えるのが無難です」

 事故は、年齢に関係なく起きている。「オレに限って」といった過信は禁物。備えあれば憂いなしだ。

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