史上最弱横綱・稀勢の里 引退した途端“英雄扱い”の違和感
まるで「大横綱」のような扱いだった。
横綱稀勢の里の引退を報じるスポーツ紙には、例によって美辞麗句が並んだ。東京版の日刊スポーツは「惜別8P」と題して、涙の引退会見を詳報し、17年間の力士生活の足跡を振り返った。
稀勢の里は中卒で角界入りし、最高位に上りつめた叩き上げ。新入幕から初優勝まで史上ワースト2位の73場所を要した非エリートの苦労人に、ファンが感情移入をするのは分かる。が、横綱としては「史上最弱」だったのは事実である。
横綱在位12場所で皆勤したのはたったの2回。通算成績は36勝36敗の97休で、勝率5割はもちろん歴代最低である。スポーツマスコミは、17年春場所の千秋楽で負ったケガが実は筋断裂の重傷だったとか、それでも愚直に稽古に打ち込んでいたとか、横綱という地位と孤独に真摯に向き合っていたとか……今になって訳知り顔でかばってみせるのだが、初日から連敗したその数日前の紙面では、「引退危機」「引退待ったなし」「もうダメなのか」と1面で書き立て、これでもかと稀勢の里にプレッシャーをかけていた。手のひら返しもいいところである。