那須川天心vs武尊“世紀の一戦”に冷や水…フジ地上波放送中止の大ショックと16年前のトラウマ
「お金の為じゃねえんだよ。未来の為にやってんだよ」(那須川天心)
「この試合の意味を分かって欲しい。まだ諦めません」(武尊)
2人の怒りと落胆は当然だろう。“世紀の一戦”との呼び声も高い、那須川天心(RISE世界王者)対武尊(K-1王者)の最強対決に冷や水を浴びせられた。6月19日に東京ドームで開催されるこの「THE MATCH 2022」について、地上波での生放送を予定していたフジテレビが5月31日の昼に放送中止を発表。
フジテレビは「諸般の事情を総合的に考慮した」と説明しているが、理由は明白。大会実行委員である株式会社ドリームファクトリーワールドワイドの榊原信行氏やその関係者が、反社会勢力との交際やそれを認める音声データの存在を「週刊ポスト」で報じられたからだ。
「フジテレビとしては報道が出た当初は反社との交際を示す決定的な証拠が出てきたわけではないので静観していました。ですが榊原氏が音声データの流出を防ぐために口止め料として500万円を支払っていた事実を認めたことが決め手となった。あくまでグレーとはいえ、6月には株主総会も控えています。危ない橋は渡らないという判断だったのでは」(格闘技興行関係者)
放送中止の発表を受けて31日夜、都内ホテルで緊急記者会見を開いた榊原氏は「正直、何が最終的な原因になったのか明確なものはない」「反社チェックも身体検査も行っている。交際の事実はない。僕がいることでネガティブになるなら(立場を)退く」とフジテレビ側の問答無用の告知に対して憤りを述べていたが、アトム市川船橋法律事務所の高橋裕樹弁護士はこういう。
「大手メディアで上場企業でもあるフジテレビの判断は妥当ではないかと思います。契約先である榊原氏側が反社会勢力との関係を報じられ、しかも500万円を支払っていた事実は看過できません。企業のコンプライアンス意識が厳しく問われるなかで、放送中止は仕方がないかもしれません」
PRIDEと反社との関係が問題視される
榊原氏には苦い記憶がある。16年前の2006年に「週刊現代」の報道でPRIDE(当時、榊原氏は代表)と暴力団の関係が報じられ、フジテレビ側は「重大な契約違反」を理由に中継を中止した経緯があったからだ。
「タイムスリップしたようなトラウマがある」とこの日の会見で語った榊原氏だが、「このときも法的措置を取ると言っていたがポーズだけでした。週刊ポストを事実無根で訴えるのかどうか」(マスコミ関係者)。
試合自体は予定通り行われ、その模様はアベマTVの有料放送で見ることはできるが、地上波の放送がなくなれば「推定1億円」(事情通)といわれる放映権料はパー。
「フジテレビにはもう一回戻ってきてほしい。断られても諦めきれない」「同じことを繰り返すダメな男」と自虐的に語ったが、自らの不徳というしかないだろう。気の毒なのは振り回される選手たちである。