大高宏雄の新「日本映画界」最前線
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「パラサイト」 猫も杓子も大絶賛だが人間描写が弱い
プロの書き手も一般観客も絶賛の嵐だ。ほとんど批判がない。こんなことはめったにない。大ヒット中の韓国映画「パラサイト 半地下の家族」である。公開当初はネタバレ厳禁の縛りが強く、中身にはあまり触れられず…
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ハイレベルで大混戦 アカデミー賞にお祭り感が戻ってきた
今週発表された米アカデミー賞のノミネートを見て、ちょっと興奮した。近年で、もっとも充実した作品群が並んでいたからだ。ここ何年か、アカデミー賞はつまらなくなっていた。理由のひとつとして、それなりにクオ…
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寅さん映画は日本の女優史 マドンナオール出演の百花繚乱
正月興行に寅さん映画が帰ってきた。「男はつらいよ お帰り 寅さん」だ。かつて年末や正月になると、多くの人が寅さん映画を見るために映画館に足を運んだことを思い出す。いわば、このシリーズは年末年始の風物…
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反体制反権力志向が息づいた「米映画3本」の重要な共通点
今年の映画ベスト3を選出する。すべて米映画で、邦画は入らない。それほど、米映画に勢いがあった年であった。「アイリッシュマン」「ジョーカー」「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」の3本である…
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「仁義なき戦い」だけにあらず 改めて見たい“辰兄ィ”作品
今月12日に亡くなった梅宮辰夫さん。幅広い交友関係や釣りの話など人間性に即した記事は盛りだくさんだが、意外に俳優としての記述が少ない。 代表作としてすぐに「仁義なき戦い」(1973年)が出て…
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「アナと雪の女王2」ハリウッド娯楽に反トランプ姿勢鮮明
大ヒット中の「アナと雪の女王2」は、反トランプを意識した作品である。ディズニーが誇るファンタジー超大作を見ながら、その感を強くした。何とも凄いことだと思う。作品を見る世界中の少なからぬ人びとが、その…
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“助け合い”アニメ「すみっコぐらし」が異例の大ヒット
日本映画界に予想外の邦画ヒットが続いている。昨年は「カメラを止めるな!」があり、今年前半には「翔んで埼玉」があった。さらに年末も近くなって登場したのがアニメーションの「映画 すみっコぐらし とびだす…
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ドキュメンタリー版では人間・望月記者をもっと見たかった
大ヒットした「新聞記者」と並行して製作されたという「i―新聞記者ドキュメント―」(スターサンズ配給)が公開された。東京新聞の望月衣塑子氏を追う。望月氏は菅義偉官房長官の定例会見で、いつも果敢な質問を…
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「ひとよ」から考察 役者が白石和彌作品に出たがる理由
「ノッている」とは、映画界ではこの人のことをいうのだろう。白石和彌監督だ。「麻雀放浪記2020」「凪待ち」に次いで、今年3本目の「ひとよ」(日活配給)が公開中だ。いずれも演出のボルテージが高い。もちろ…
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表現の自由の侵犯 「主戦場」騒動で問われる今後の映画界
今年の東京国際映画祭が11月5日に静かに閉幕した。静か過ぎて寂しいくらいだったが、同時期に国内外で大きな注目を集めた映画祭が他にあった。KAWASAKIしんゆり映画祭だ。慰安婦問題を題材にした「主戦…
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八千草薫さん「美しさと哀しみと」で見せた底知れない怖さ
八千草薫さんが逝った。享年88。八千草さんほどの大女優になると、「昭和を代表する女優が亡くなった」と毎回のように報じられるが、彼女は平成の活躍も見事なものだったと思う。昭和に限定して語ってほしくない…
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複雑に見えて明快 「カメ止め」上田監督は一発屋ではない
注目度が高いだけに、なかなか難しい挑戦だったと思う。昨年、興収30億円を超える大ヒットとなった「カメラを止めるな!」の上田慎一郎監督の長編2作目「スペシャルアクターズ」が、予想を下回るスタートになっ…
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不動の映画主演女優・吉永小百合 最新作で新境地なるか
吉永小百合はなぜ、長年にわたって映画の主演を続けることができるのだろうか。公開されたばかりの「最高の人生の見つけ方」を見て、改めてそのことを考えた。主演を張り続けるのは並大抵のことではない。それが可…
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「ジョーカー」を+600円のドルビーシネマで見る価値は?
いま、映画館にはスクリーンや音響のさまざまな設備が相次いで導入されている。今月4日、都内「丸の内ピカデリー」で始まったのがドルビーシネマだ。T・ジョイ博多、MOVIXさいたま、梅田ブルク7に次いで国…
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ワンス・アポン・ア・タイム・イン~から始まる2本の映画
何とも面白い現象だ。「ワンス・アポン・ア・タイム・イン」(「昔々」の意)という実に長ったらしい題名が付けられた洋画が、同時期に2本も公開されている。「ワンス・アポン~」のあとには、それぞれ「・ハリウ…
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名画座でじわりと人気 往年の“バイプレーヤー”をもう一度
都内の名画座が、相変わらずユニークな番組編成でしのぎを削っている。ファンにとっては、何を見たらいいか迷うほどだ。監督や俳優の特集、作品傾向に即した番組編成などは当たり前として、最近では往年の名脇役を…
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フジ映画好調 お祭り政治風刺の効いた三谷監督作がヒット
フジテレビ映画が好調だ。先週公開されたばかりの「記憶にございません!」を含めると、今年に入って実に5作品連続で大ヒットを放ったことになる。この8月から9月、テレビ局製作の映画が足並みを揃えたかのよう…
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映画「火口のふたり」セックスへの貪欲さと予測不能の展開
18歳以上の観客が見られる〈R18+〉指定の「火口のふたり」がヒットしている。柄本佑と瀧内公美が主演だ。というより、出演者はこの2人だけである。かつて付き合っていたいとこが、再び関係を持つ。その数日…
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興収10億円超確実 ハリウッド“有名3人衆”が表現する1969年
1969年にハリウッドで起きたシャロン・テート殺害事件をご存じだろうか。カルト集団が米女優を惨殺した事件で、先週公開された「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」は、その話を中心に据えている…
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異例の1000日連続上映 映画「この世界の片隅に」が持つ力
太平洋戦争下の広島・呉を舞台にした大ヒットアニメーション「この世界の片隅に」を覚えている人も多いだろう。さきにNHKの総合テレビで放映されたばかりだが、この作品が公開から2年半以上が経つのに、いまだ…