佐高信「この国の会社」
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”強盗慶太”の東急では番頭が育ったわけ
前回の西武の項で、ライバルの東急との比較で、それぞれの創業者の異名を”ピストル堤”対”強盗慶太”としたが、もちろん、東急の方は五島慶太をもじっている。 獅子文六が『箱根山』(講談社)と題して…
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”ピストル堤”なき西武は銀行管理になった
傘下に西武鉄道やプリンスホテルを抱えるこの会社のトップは第一勧銀(現みずほ)出身の後藤高志だが、創業者は”ピストル堤”といわれた堤康次郎である。先日、滋賀県出身の新聞記者と話していたら、地元では堤は…
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脱線事故は「個人の責任」と言ったJR西日本の井手正敬
4月1日に新潮文庫に入った松本創著『軌道』はJR西日本の福知山線脱線事故を追ったものである。 そこに「JR西の天皇」といわれた井手正敬(元会長)のインタビューが出てくる。井手は松田昌士、葛西…
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「武富士」に対してだらしなさが際立った朝日新聞社
今度出した『時代を撃つノンフィクション100』(岩波新書)に私は、サラ金の武富士に関する本を2冊入れた。山岡俊介の『銀バエ』(創出版)と三宅勝久の『武富士追及』(リム出版新社)である。 山岡…
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企業は教育や政治の場ではないと答えた早川種三とフジ住宅会長の差
興人などを生き返らせて、”企業再建の神様”といわれた早川種三はとても魅力的な人だった。 その早川が日本特殊鋼の再建を頼まれて乗り込んだ時、同社には共産党員が100人余りいると言って、大森警察…
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関西電力の「反原発町長暗殺指令」を振り返る
福井県高浜町の元助役、森山栄治から関西電力の会長だった八木誠や社長の岩根茂樹らに原発マネーが還流していたことが分かった時の記者会見が珍無類だった。 岩根は恥ずかしげもなく、こう言ったのである…
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スズキの鈴木修とホンダの本田宗一郎の違い
私の郷里の『山形新聞』および『山形放送』のドンだった服部敬雄が亡くなった時、 「選挙もないのに知事が代わった」 と連載していた週刊誌のコラムで書いて、以後、両社から原稿依頼や出演依頼が…
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工藤昭四郎のバンカー魂はきらぼし銀行に受け継がれたか
東京都民銀行は新銀行東京や八千代銀行と合併して、きらぼし銀行となった。都民銀行の創立者の工藤昭四郎は日本興業銀行の調査課長などをやった非常に骨のあるバンカーだった。当時の部下に、のちに暮しの手帖社の…
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文藝春秋の文春砲は自社に向けては発射されなかった
2006年に(株)文藝春秋から出た『社歌』という本がある。文春のそれも載っているが、1937年に発表されたので、いかにも古くさく、15年前の時点で、「中堅以下の社員のほとんどが聞いたこともありません…
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戦時中に軍需産業へ転ばなかったミキモトの真珠翁
歌人の馬場あき子に「マスクしてコロナウイルスに抗へば不要不急のものらかがやく」という歌がある。真珠など「不要不急のもの」だろう。しかし、「非常時」と抑圧された戦争中に「ゼイタクは敵だ」と非難された時…
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藤田田、竹中平蔵、原田泳幸というのがマクドナルドの味か
思わぬ形でマクドナルドの名前がクローズアップされた。元社長の原田泳幸が妻で歌手の谷村有美さんをゴルフクラブで殴り、逮捕されたというのである。原田は2004年に社長になるや、無料キャンペーンをやったり…
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「銀行に成り下がるな」を地で行く誇り高き城南信用金庫
城南信金だけでなく、信金界のドンだった小原鐵五郎の遺したセリフがいい。 「信用金庫は銀行に成り下がるな」 みんな成り上がりたがるが、「銀行に成り下がるな」は言い得て妙だろう。 …
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ベンツやフォルクスワーゲンと「日本製鉄」の違いとは
官営八幡製鉄所を起源にもつ日本製鉄は資本主義の枠外で生きてきたようなところがある。新日本製鉄と住友金属が合併して新日鉄住金となり、旧社名の日本製鉄に復帰したが、八幡製鉄に入社して新日鉄のトップになっ…
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“花王の暴れん坊”丸田芳郎の生き方は受け継がれているのか
花王の新社長・長谷部佳宏が「心に残る本」として池井戸潤の『下町ロケット』を挙げている。花王(石鹸)をモデルにした城山三郎の『男たちの経営』を挙げてほしかったとも思うが、後者に「丸田は入社以来、花王の…
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「ウェザーニューズ」を急成長させた創業者のモーレツ経営
今野晴貴の「ブラック企業」(文春新書、2012年刊)にこの会社もノミネートされている。2008年に入社した男性が半年後に自殺するという事件が起きたという。過労やパワハラが原因だったが、気象予報士試験…
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社長の世襲をやった公益企業・東京ガスは変われたのか
『週刊ダイヤモンド』の1月9日新春号で社長の内田高史が自分の選任権、解任権を、過半数を占める社外取締役に任せて自らにプレッシャーをかけると言っている。しかし、「社外」は実質「社内」であり、大した改革に…
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トヨタ自動車は豊田家のものなのか
株式を公開する際に、価格が値上がりすれば、創業者はそれを売って、創業者利潤を得る。その後は会社はいわば公のものとなり、創業者もしくは創業家とは一応無縁のものとなる。それがイヤならサントリーのように株…
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みずほ銀行に見る…社外取締役は「田んぼのカカシ以下」
富士銀行、第一勧業銀行、そして日本興業銀行が合併してスタートしたみずほにも社外取締役はいる。外から経営をチェックするために存在しているのだが、この国の会社ではほとんどが“社内”取締役になっている。ズ…
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政治家にもみくちゃにされてきたJALとANAの不満
「我田引水」をもじって「我田引鉄」ということが言われた。政治家が自分の選挙区に強引に鉄道を引っ張ったり、新幹線の停車駅をつくったりしたことを指す。鉄道以上に政治家が関わってくるのが航空会社である。中で…
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球団の監督を次々変える楽天・三木谷社長は理念なき経営者
代表取締役会長兼社長の三木谷は松下政経塾を絶賛していた。私は同塾を松下未熟塾とヤユしているが、未熟の典型のような同塾卒業生の前原誠司と三木谷は、今回、同じ位置に立たされた。 例の「希望の党」…