鈴木敏夫 新・映画道楽 体験的女優論
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池内淳子編(2)「孤独の影を背負ったヒロイン像は彼女によく似合っていると思いました」
池内淳子主演、川島雄三監督の「花影」(1961年)で、ヒロイン・葉子のモデルになった坂本睦子。17歳から銀座のバーで働き始めた彼女は、そこに通ってくる文士たちと、次々に肉体関係を持った。 「彼…
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池内淳子編(1)印象が最初に強く刻まれたのは、川島雄三監督の映画「花影」
小料理屋を持つことを夢見る芸者のてまりを主人公にした「日曜劇場」の人気シリーズ「女と味噌汁」(TBS系、1965~80年)で視聴率“20%女優”の異名を取り、血のつながらない子どもたちを育てる母親を…
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「歌え若人達」編(下)山田太一は大島渚よりも、リアルな学生の気分を映し出そうとした
1963年1月6日に公開された木下恵介監督、山田太一脚本による「歌え若人達」。これは大学の寮で暮らす松川勉、川津祐介、三上真一郎、山本圭の学生4人を描いた青春群像劇。もとは山田太一が大学の同級生だっ…
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歌え若人達編(上)初期の作品から印象的な「セリフのうまさ」は木下監督の口述筆記で身についた
前回までは山田太一のテレビドラマの初期の代表作「3人家族」(TBS系.1968年)を取り上げたが「山田太一編」の最後として、彼の脚本家としての原点である、松竹時代にスポットを当てる。 山田太…
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3人家族編(4)「縁を大切に育て、生まれるものの先に幸福が」時代への反動の思い
柴田雄一(竹脇無我)と稲葉敬子(栗原小巻)の愛を描いた、山田太一脚本の「3人家族」(TBS系、1968年)。2人は最終的に将来の結婚を約束するが、もう一人、スポットを当てたい人物がいる。それが敬子の…
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3人家族編(3)敬子と雄一は初めて抱き合うもキスはせず、結婚の約束をする
「3人家族」(TBS系、1968年)で300人から15人だけ選ばれる、海外留学ができる研修制度の試験に合格した雄一(竹脇無我)。海外への出発が迫る中、雄一は敬子(栗原小巻)を誘って、日帰りドライブの旅…
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3人家族(2)敬子と雄一の関係に見る「思い切り働く」ことへの問いかけ
山田太一脚本の「3人家族」(TBS系)が放送された1968年。日本は熱く燃えていた。 川端康成がノーベル文学賞受賞という明るいニュースもあったが、成田空港建設を巡る三里塚闘争をはじめ学生紛争…
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3人家族編(1)初めての山田太一脚本、主人公の男女は第5話まで言葉を交わさない
これまで1970~90年代の山田太一脚本によるテレビドラマを取り上げてきたが、鈴木敏夫には自身の山田太一体験の原点となった忘れられない作品がある。それが〈木下恵介アワー〉の一本、「3人家族」(TBS…
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ふぞろいの林檎たち編(9)「いとしのエリー」ほかドラマの邪魔をしないサザンの楽曲
「ふぞろいの林檎たち」シリーズ(1983~97年・TBS系)で誰もが思い出すのはオープニングの、高層ビル群をバックに林檎を投げ上げるショットと、そこにかかるサザンオールスターズの名曲「いとしのエリー」…
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ふぞろいの林檎たち編(8)山田太一が14年かけて表現した「テレビドラマならでは」の面白さ
「ふぞろいの林檎たちⅣ」(1997年・TBS系)で陽子(手塚理美)が働く病院では、ホスピスを開設する準備が始まった。その一方、仲手川(中井貴一)の母・愛子(佐々木すみ江)が末期がんに侵されていることが…
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ふぞろいの林檎たち編(7)当時63歳の山田太一さんが“生老病死”をテーマに描いた
1997年4月から放送が始まった「ふぞろいの林檎たちⅣ」(TBS系)。のっけからネガティブなことを言うが、この作品はシリーズのファンから評判が悪い。 「リアルタイムにドラマを見ていたファンの意…
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ふぞろいの林檎たち編(6)「浮気」を中心に置くことで、30歳を前に揺れる心を見事に描き出した
パート2が終わって6年後。「ふぞろいの林檎たちⅢ」(1991年、TBS系)の放送が始まった。パート1で大学生だった主人公たちも30歳目前。仕事にも慣れてきて、家庭を持った者もいる。 「西寺実(…
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ふぞろいの林檎たち編(5)山田太一さんのリサーチ力に感心「サラリーマン経験がないのにリアル」
「ふぞろいの林檎たちⅡ」(1985年、TBS系)で、工作機械を売る会社に勤めている岩田健一(時任三郎)。営業先の仕入れ部に行っても注文が取れず、悩んでいた彼に現場の正宮課長(岡本信人)が、320万円の…
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ふぞろいの林檎たち編(4)恋愛遍歴と奔放発言で世間を騒がせた石原真理子の役と重なる人生
パート1から2年後、「ふぞろいの林檎たちⅡ」(1985年、TBS系)の放送が始まった。 主人公たちは社会人になっている。岩田健一(時任三郎)と西寺実(柳沢慎吾)は工作機械を扱う同じ会社のセー…
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ふぞろいの林檎たち編(3)劣等感を持ったまま、誇りを持って生きていくとはどういうことか
「ふぞろいの林檎たち」(1983年・TBS系)は、三流大学に通う仲手川良雄(中井貴一)、岩田健一(時任三郎)、西寺実(柳沢慎吾)の青春を描いたドラマである。彼らは大学4年生だが、就職口の当てもない。そ…
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「ふぞろいの林檎たち」ヒロインの中島唱子さんは見た目でわかるリアルな劣等感を表現した
「ふぞろいの林檎たち」(1983年・TBS系)のパート1は、劣等感が作品のテーマ。登場する女性たちも、それぞれ劣等感を抱えている。看護学校に通う晴江(石原真理子)と陽子(手塚理美)は女子大生に引け目を…
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ふぞろいの林檎たち編(1)山田太一は三流大学生を主人公にし劣等感に苦しむ姿を描いた
「早春スケッチブック」(1983年・フジテレビ系)が終わって2カ月後、「ふぞろいの林檎たち」(83年・TBS系)の放送が始まった。この作品は「パートⅡ」(85年)、「パートⅢ」(91年)、「パートⅣ」…
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早春スケッチブック編(7)「この最後の言葉は、寺山修司に対する山田さんのリスペクトでもある」
「早春スケッチブック」(フジテレビ系・1983年)は、どんな結末を迎えたのか。望月家の人々に波紋を投げかけた竜彦(山崎努)の病状が悪化して、気持ちの上では彼のことを放っておけない都(岩下志麻)、和彦(…
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早春スケッチブック編(6)山田太一の妻・石坂和子に恋した寺山修司
岩波書店が出している2016年8月号の図書に、「寺山修司からの手紙」の出版に合わせて、山田太一夫人である石坂和子(山田太一の本名は石坂太一)が書いた、「あの頃─『寺山修司からの手紙』を読んで」という…
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早春スケッチブック編(5)竜彦は寺山修司、省一は山田太一がモデル
「早春スケッチブック」(1983年・フジテレビ系)は、望月家の都(岩下志麻)と省一(河原崎長一郎)夫婦、沢田竜彦(山崎努)と若い愛人である明美(樋口可南子)が織りなす、大人たちのラブストーリーと見るこ…