鈴木敏夫 新・映画道楽 体験的女優論
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今村昌平と今村プロ映画の女優編(8)「もののけ姫」は「神々の深き欲望」に勝った…ひそかに思っているんです
鈴木敏夫は「もののけ姫」(1997年)を企画したとき、監督の宮崎駿から作品のテーマと舞台設定を聞いて、今村昌平監督の「神々の深き欲望」(68年)を思い出した。 「2本とも、舞台は日本の南方でし…
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今村昌平と今村プロ映画の女優編(7)「神々の深き欲望」は今に至るも今村さんの頂点だと思う
「神々の深き欲望」(1968年)の終盤、主要人物の運命が大きく動く。クラゲ島の近代化を進める竜立元は愛人ウマの上で腹上死し、トリ子は一度東京へと帰った刈谷を待ちわびて、彼の子どもを身ごもったまま亡くな…
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今村昌平と今村プロ映画の女優編(6)「神々の深き欲望」では沖山秀子の抜擢が大成功でした
今村昌平監督の「神々の深き欲望」(1968年)は南方のクラゲ島を舞台に、古くから残る島の風習と近代化の波の中で翻弄される人々を描いた群像劇である。映画の中盤、島で絶対的な支配力を持つ神託を伝えてきた…
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今村昌平と今村プロ映画の女優編(5)「神々の深き欲望」では映画の中心に日本社会の源流を置いた
「神々の深き欲望」(1968年)は今村昌平監督初のカラー映画にして、2時間55分の大作である。その原型は、今村監督が62年に作・演出した舞台「パラジ-神々と豚々」。この戯曲は「にっぽん昆虫記」(63年…
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今村昌平と今村プロ映画の女優編(4)「人間蒸発」に衝撃を受けて、過去の今村作品も観るように
今村昌平監督のドキュメンタリー映画「人間蒸発」(1967年)。これは失踪した婚約者を捜すネズミの愛称を持つ女性と、彼女に連れ添って追跡の旅を続ける俳優・露口茂との7カ月間を描いたものだ。 「こ…
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今村昌平と今村プロ映画の女優編(3)「人間蒸発」は僕も宮崎駿も大好きで…
今村プロダクションの第1回製作作品「『エロ事師たち』より 人類学入門」(1966年)は、主演の小沢昭一が毎日映画コンクール男優主演賞を受賞し、作品もキネマ旬報ベスト・テンで第2位になり、独立プロとし…
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今村昌平と今村プロ映画の女優編(2)「『エロ事師たち』より人類学入門」での坂本スミ子さんは、春という女性の本能を感じさせる演技をしていますね
「『エロ事師たち』より 人類学入門」(1966年)に主演した小沢昭一は、渋谷実監督の「勲章」(54年)で映画デビューし、55年からは主に日活で名バイプレーヤーとして活躍した。今村昌平が助監督を務めた川…
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今村昌平と今村プロ映画の女優編(1)今村監督の仕事と、自分が週刊誌でやっていた仕事には、共通の匂いを感じた
1966年3月12日、今村昌平の監督第8作「『エロ事師たち』より 人類学入門」が公開された。63年に発表された、野坂昭如の小説デビュー作を原作としたこの作品は、成人映画に指定されたため、当時高校生の…
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今村昌平と日活女優編(9)「『赤い殺意』を観た増村さんや若尾さんは、どう思ったのかなって」
「赤い殺意」(1964年)に出てくるヒロインの貞子(春川ますみ)の夫・吏一(西村晃)は、毎日家計簿のチェックをして、貞子に少しの無駄遣いも許さないケチな男。自分の気が向いた時に彼女の体を求め、貞子を性…
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今村昌平と日活女優編(8)「貞子は春川ますみが演じたことで、生きたキャラクターになった」
「にっぽん昆虫記」(1963年)はキネマ旬報ベスト・テン第1位、ブルーリボン賞作品賞に輝き、今村昌平も毎日映画コンクールを含め、多くの映画賞で監督賞を受賞した。興行的にも成功を収めたことで、すぐに次作…
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今村昌平と日活女優編(7)「吉村実子さんを立て続けに抜擢した理由がよくわかる」
今村昌平監督の「にっぽん昆虫記」(1963年)は公開当時、主人公のとめ(左幸子)が子どもを産んだのち、乳が張って苦しいと北村和夫扮する父親に訴え、彼に母乳を飲んでもらう場面のスチール写真が話題になっ…
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今村昌平と日活女優編(6)左幸子さんが女性の半生を見事に演じきっている
1963年11月、今村昌平の監督第6作「にっぽん昆虫記」が公開された。前作「豚と軍艦」から3年、その間に今村は浦山桐郎の監督デビュー作「キューポラのある街」(62年)の脚本を書き、日活からの要請で海…
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今村昌平と日活女優編(5)今村監督は日本的な社会構造の中に女性の自立を描いた
今村昌平監督の「豚と軍艦」(1961年)で、ヒロインの春子を演じた吉村実子。横須賀の貧乏家庭で暮らす春子は、母親が毎日何もしないでゴロゴロしているし、姉の弘美は米兵の妾になっていて、たまに軍の物資を…
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今村昌平と日活女優編(4)吉村実子のデビュー作「豚と軍艦」は、戦後日本の膿を浮き彫りにした重喜劇
「豚と軍艦」(1961年)は、山内久脚本による今村昌平の監督第5作。「今村昌平 全作品を語る」(キネマ旬報社)によれば、最初は横須賀の米軍基地とやくざの小さな話だったが、山内が横須賀一帯に広がったスケ…
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今村昌平と日活女優編(3)代表作「にあんちゃん」で探し出した松尾嘉代
今村昌平の名前が広く世に知られたのは、監督第4作「にあんちゃん」(1959年)だった。不況にあえぐ炭鉱の町を舞台に、両親を亡くした朝鮮人の4兄妹が貧窮のためにバラバラになりながらもたくましく生きてい…
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今村昌平と日活女優編(2)「もしも黒沢明監督の助手をしていたら…2人は合わなかったと思います」
今村昌平は、1926年に耳鼻咽喉科医・今村半次郎の三男として東京で生まれた。旧制中学を卒業後、桐生高等工業へ進むが、ほとんど学校へは行かず、寮に引きこもって芝居の台本を書いたり、本を読んで過ごしたと…
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今村昌平と日活女優編(1)「あなた、干支は?」と聞かれてごまかせなかった
今村昌平は、「楢山節考」(1983年)、「うなぎ」(97年)で2度カンヌ国際映画祭のパルムドールに輝いた、日本映画界を代表する世界的な映画監督である。その日本人を独自の視点で捉えた作品群は、映画史的…
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浅丘ルリ子編(7)リリーだけは今も寅さんと心で寄り添って生きている
第48作「男はつらいよ寅次郎紅の花」(1995年)は翌年8月に肺がんで亡くなった渥美清が、最後に寅さんを演じた映画である。そのマドンナとして、浅丘ルリ子演じるリリー松岡が15年ぶりにシリーズへ帰って…
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浅丘ルリ子編(6)リリーと寅さんは沖縄の暑さの中で、蜃気楼のように夢を見た
「男はつらいよ」シリーズにリリー松岡(浅丘ルリ子)が、三度登場したのが「男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花」(1980年)である。前の2作品では北海道で寅さんと出会ったリリーだが、今回彼らが再会する…
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浅丘ルリ子編(5)「女が幸せになるには男の力を借りないとでも? 笑わせるんじゃないよ」
浅丘ルリ子演じるリリー松岡が再びマドンナとして登場したのが、「男はつらいよ 寅次郎相合い傘」(1975年)である。シリーズ最高傑作に挙げる人も多いこの作品で、寅さんとリリーは函館で再会。前作のラスト…