天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」
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「卵円孔開存」は術後の感染症心内膜炎リスクを高める
心臓の弁を交換する手術を受けた患者さんは、術後に感染性心内膜炎を発症するリスクがアップします。心臓を覆っている心膜や心臓の中にある弁に細菌が取り付いて感染を起こす病気で、血液内に侵入した細菌が交換し…
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大動脈二尖弁の再手術で考えさせられたこと
「大動脈二尖弁」という病気があります。本来、3枚あるはずの心臓内の大動脈弁が2枚しかない先天性の異常で、日本人の80~100人に1人が該当するといわれています。といっても、弁が2枚だからといって日常生…
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30年後も問題ないのはエビデンスにのっとった手術の賜物
前回、狭心症に対する冠動脈バイパス手術と、閉塞性動脈硬化症に対する右足動脈の非解剖学的バイパス手術を同時に行った患者さんのお話をしました。手術から12年後に大がかりな足の再手術が必要な状況になり、エ…
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患者が改めて教えてくれたエビデンスに基づく手術の重要性
1997年、冠動脈バイパス手術の症例数が350例を超え、日本一になりました。それから20年がたち、心臓疾患の治療は大きく変わりました。 画像診断機器や人工弁、人工血管といった手術で使う機材は…
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心臓手術には「勇気ある撤退」を決断する場合もある
これ以上、進んだら自分の技術の外側にいってしまう――。手術中にそう判断し、「勇気ある撤退」を決断する場合があります。経験も技術も積み重ねた今ではほとんどありませんが、若い頃にはそうしたケースが何度か…
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冠動脈バイパス手術を一度に8箇所行うケースもある
狭心症や心筋梗塞といった虚血性心疾患を治療する大きな柱のひとつが「冠動脈バイパス手術」です。虚血性心疾患は、心臓の筋肉に酸素や栄養を送るための血管=冠動脈が細くなったり詰まってしまうことで起こります…
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再手術を考えて「癒着」が少なくなるように終わらせる
前回、足かけ23年で3回、弁膜症の手術をした81歳の女性患者さんのお話をしました。弁置換術で交換した弁が経年劣化して、その都度、再交換が必要だったのです。 弁を交換する手術自体は、3回目でも…
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高齢者の感染性心内膜炎の緊急手術は難易度がハネ上がる
心臓手術は、リスクが上がる条件がいくつも重なることで難易度がアップします。たとえば、「高齢」で「人工透析」を受けている患者さんの「感染性心内膜炎」の「緊急手術」となると、これだけで予測死亡率が35%…
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予想以上に血管が石灰化していた高齢患者をその場の判断で対処
外科医にとって難しい手術というのは、「制限される条件」が揃っている患者さんの手術です。たとえば、80歳以上の高齢者で腎機能障害などの持病があって、心臓発作で救急搬送された患者さんの緊急手術といったケ…
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乳がん手術後に放射線治療を受けている患者さんのケース
まだ34歳だった小林麻央さんの命を奪った乳がんが、あらためてクローズアップされています。その乳がんが心臓の手術にも大きな影響を与えるケースがあります。患者さんがかつて受けた乳がんの治療によって、心臓…
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“条件が悪い”患者の手術は技量と経験、何より覚悟が必要
「リスクが高いので手術はできないと、他の病院で手術を断られました。ここならば手術をしてもらえるでしょうか」 このように当院を訪ねてくる患者さんはたくさんいらっしゃいます。 そうした患者…
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心拡大は手術のダメージをより少なくしなければならない
心臓が通常よりも大きくなっている「心拡大」の患者さんは、手術後に著明に改善することによって自覚症状が格段に良くなります。しかし、時に悪化していくケースもあり、厄介な術前状態です。 大人の心臓…
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肺、胃腸、心臓の病気は互いに大きく関わっている
肺、胃、心臓(血管)の3つの臓器はとても密接な関係にあります。COPD(慢性閉塞性肺疾患)がある人は、胃潰瘍などの消化性潰瘍を合併しやすく、さらに大動脈瘤ができやすい傾向があるのです。 近年…
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手術で救えるのは患者本人だけではない
前回、お話ししたマルファン症候群のほかにも、心臓や血管のトラブルを合併して突然死するリスクが高い先天性疾患はいくつもあります。 「エーラス・ダンロス症候群」がそのひとつです。体の構造を支える結…
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若くして心臓突然死を招く「マルファン症候群」に注意
背が高くスラッとして痩せている。手、足、指が長い。物が二重に見えたり、強い近視がある――。こうした身体的特徴や症状のある人が、若くして大動脈解離や大動脈破裂を発症し、突然死を起こすケースがあります。…
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バイパス手術が難しいなら血管再生治療で足の切断を防ぐ
当院の心臓外科では、「慢性閉塞性動脈硬化症」(ASO)や「末梢動脈疾患」(PAD)の患者さんの治療もおこなっています。主に糖尿病が原因で動脈硬化が進み、足の血管がボロボロになったり詰まってしまうこと…
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停電で人工心肺が停止…“手動で”乗り切った
心臓外科医は、体外で心臓と肺の“代役”を務める「人工心肺」をしっかりコントロールすることが求められます。 手術中、血液循環のバランスがある程度とれてしまえば、人工心肺を自動運転のような形にし…
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人工心肺を使わなければならない「2つのケース」
心臓と肺の“代役”として、体外で血液を循環させる「人工心肺」は、心臓を止めて行う手術に欠かせない機械です。ただ、赤血球の寿命が短くなったり、免疫反応が変化して合併症を招くリスクがあるなどのデメリット…
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画期的な体外循環装置の人工心肺にも“デメリット”がある
心臓手術において、「人工心肺」は欠かせない機械です。心臓手術は年間6万5000件ほど行われていますが、その7割は人工心肺を使用するか、もしくは準備しておく手術になります。 人工心肺は体外で心…
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糖尿病性心筋症は動脈硬化が進んでいなくても発症する
糖尿病が心臓疾患の重大なリスク因子であるということは、これまでたびたび取り上げてきました。糖尿病の人は、そうでない人に比べて男性で2倍、女性で3倍も心筋梗塞の発生頻度が高く、死亡率も1.5~3倍ほど…