肺、胃腸、心臓の病気は互いに大きく関わっている
COPD、胃潰瘍、大動脈瘤の3つを抱える人が少なくない
肺、胃、心臓(血管)の3つの臓器はとても密接な関係にあります。COPD(慢性閉塞性肺疾患)がある人は、胃潰瘍などの消化性潰瘍を合併しやすく、さらに大動脈瘤ができやすい傾向があるのです。
近年、腹部大動脈瘤の治療はステントグラフト(人工血管の中にバネを入れたもの)を、大動脈瘤をまたぐように留置して破裂を防ぐ治療が主流ですが、かつては開腹手術が多く行われていました。その手術に備えて術前に患者さんを検査すると、「COPDがあって肺機能が悪いうえに、胃潰瘍の既往がある人」を頻繁に目にするのです。
そこで、いろいろと調べてみると、大動脈瘤、COPD、消化性潰瘍の3つは、ひとりの体の中で共存しているケースが多いことがわかりました。内科医の“教科書”である医学書にも、そうした「三徴」(特徴的にみられる3つの症状)が記載されていたのです。
つまり、COPDがあって胃腸の調子が悪くなりやすかったり、胃潰瘍が治りづらく肺機能が悪い人は、動脈瘤ができやすい可能性があるということになります。COPDの患者さんは、血液中に2、3―DPG(2、3―ジホスホグリセレート)という物質が多く存在しています。この物質は赤血球のヘモグロビンに酸素よりも結合しやすく、低酸素を代償しているのです。この状態が続くことで、胃壁の保護構造や血管壁の健常状態を維持する機能に異常を来すのではないかと考えています。