“条件が悪い”患者の手術は技量と経験、何より覚悟が必要
「リスクが高いので手術はできないと、他の病院で手術を断られました。ここならば手術をしてもらえるでしょうか」
このように当院を訪ねてくる患者さんはたくさんいらっしゃいます。
そうした患者さんは、以下のようなケースがほとんどです。①かつて心臓手術を受けていて、再手術が必要になった②心臓疾患の他に糖尿病などの合併症を抱えていたり、腎機能障害で人工透析を受けている③高齢で全身状態が非常に衰弱している。いずれも、手術のリスクが大きい状態で、外科医が手術をするかどうか迷うケースといえます。そうした“条件が悪い”患者さんに対しては、リスクに立ち向かう覚悟がない外科医は手術を断る場合が多いのです。
私の場合、多少なりとも患者さんの状態が安定していて、本人にもご家族にもこちらの説明をきちんと理解してもらえる状況であれば、ほぼ手術を行ってきました。
もちろん、手術はできないと判断するケースもあります。たとえば、来院されるまでの間に認知症が進んでしまって、会ってお話をしても理解力や判断力が障害されている高齢の患者さんはどうしても難しいといえます。また後期高齢者で、手術を終えてから回復するまでの時間と予想される健康寿命の長さを考慮して、手術をしないほうがQOL(生活の質)を維持しながら自然寿命をまっとうできると判断した場合も、手術は選択しません。