心拡大は手術のダメージをより少なくしなければならない
心臓が通常よりも大きくなっている「心拡大」の患者さんは、手術後に著明に改善することによって自覚症状が格段に良くなります。しかし、時に悪化していくケースもあり、厄介な術前状態です。
大人の心臓は、握りこぶしを軽く握ったくらいの大きさが一般的です。しかし、心臓や血流に何かしらのトラブルを抱えていると拡大や肥大を来し、通常の3倍くらいまで大きくなってしまうケースもあるのです。胸郭の幅に対し、心臓の幅が50%以上を占めているケースを心拡大といいます。そのうち、心臓の壁=心筋が厚く大きくなった状態が心肥大です。
心臓が拡大する原因はいくつかあり、拡大している場所によって原因疾患が変わってきます。心臓は、左心房、右心房、左心室、右心室という4つの部屋に分かれています。全身から戻ってきた血液は右心房に入り、逆流を防ぐ弁でつながっている右心室に流れ込んでから肺に送り出されます。肺で酸素を受け取った血液は、その後に左心房に入り、同じく弁でつながっている左心室から全身に送り出され、循環しているのです。
心室の拡大は、心室に流れ込む血液の量が多くなることで起こります。左心室と大動脈をつなぐ大動脈弁の閉鎖不全症、左心房と左心室をつなぐ僧帽弁の閉鎖不全症といった血液の逆流を引き起こす病気がある場合が該当します。また、心筋梗塞を何度か起こしている場合や、拡張型心筋症などで心室の筋肉そのものが異常を来しているケースでも心室の拡大を招きます。