画期的な体外循環装置の人工心肺にも“デメリット”がある
心臓を止めて行う手術には欠かせないが……
心臓手術において、「人工心肺」は欠かせない機械です。心臓手術は年間6万5000件ほど行われていますが、その7割は人工心肺を使用するか、もしくは準備しておく手術になります。
人工心肺は体外で心臓と肺の“代役”を務める装置です。全身に血液を送り出す心臓の「出口」=「大動脈」に血液を送り出す送血管という管を入れ、全身から血液が戻ってくる「入り口」=「上下大静脈」(もしくは右心房)には脱血管という管を挿入します。それぞれの管を心臓が担うポンプ機能と、肺が担う二酸化炭素と酸素の交換機能を持っている装置につなぎ、血液を体外で循環させるのです。
人工心肺が登場したのは1950年代です。それまでは、心臓を止める手術をする場合は「交差循環法」という手術が行われていました。たとえば、子供の心臓手術を行う際、子供の動脈・静脈と健康な母親(または父親)の動脈・静脈を管でつなぎ、子供の心臓が停止しても母親から血液が全身に送られるという方法です。
しかし“出たとこ勝負”で、健康な母親をも危険にさらすことがある不確実な方法でした。それが人工心肺が開発されたことによって、複雑でリスクの高い方法を選択することなく、心臓を一時的に止めて行う手術が可能になりました。それほど画期的な装置といえます。