患者が改めて教えてくれたエビデンスに基づく手術の重要性
1997年、冠動脈バイパス手術の症例数が350例を超え、日本一になりました。それから20年がたち、心臓疾患の治療は大きく変わりました。
画像診断機器や人工弁、人工血管といった手術で使う機材はもちろん、治療薬も劇的によくなっていますし、TAVIをはじめとしたカテーテルなどの内科的治療も格段に進歩しています。20年前に手術を行った患者さんも、そうした治療の進歩の流れにうまくマッチできている方は、いまも大きな問題はなく、元気に過ごされています。
ただ、そうした流れに乗ることができた患者さんは、振り返ってみると、その時点で「よかった手術」を行っている場合がほとんどです。一方、当時「どうなんだろうか?」と考えさせられるような手術を行った患者さんは、治療の“賞味期限”がきて、再び具合が悪くなったり、大がかりな再手術が必要になるケースが散見されます。
「よかった手術」というのは、大規模データに基づいた、エビデンスにのっとった手術です。片や「どうなんだろう?」という手術は、少数の症例報告はあるものの、厳密にはエビデンスに基づいていないローカルルールで行われた手術のことです。かつては、「EBM」(evidence―based medicine)=「検証と根拠に基づいた医療」というものがそれほど認識されていませんでした。