IoTビジネスはIT企業よりアナログ企業にチャンスあり

公開日: 更新日:

「はじめてのIoTプロジェクトの教科書」武下真典/幸田フミ著(クロスメディア・パブリッシング)

 最近、IoTという言葉をよく聞くようになった。さまざまな機器がインターネットにつながるようになることだ。

 インターネットでつながるスマート家電は、例えば、エアコンのスイッチを外出先からスマホで操作できる。また最近では、スマートハウスも注目されている。家電だけでなく空調や発電装置も含めて、情報を一体管理することで、快適かつ効率的な生活を実現するものだ。

 本書は、これからIoTに関するビジネスを行おうとする人のために、どのようにプロジェクトを進めたらよいのかに焦点を当てたIT初心者向けの解説書だ。むずかしいIoTを分かりやすく伝えるために、IoT専門家の教授、IoTビジネスを手掛けることになったコンサルの女社長、その会社の新入社員という3人の対談形式で、話が進んでいく。また。2色刷りやイラストの多用、節目ごとのまとめなど、最近の受験参考書のような体裁になっている。

 肝心の中身だが、本書によると、IoTの適用範囲は、スマート家電やスマートハウスよりもずっと広いという。例えば、最近、大都市中心部に設置されるようになった宅配便の受け取りロッカーも、IoTの成果だとしている。

 そして、今後のIoTビジネスは、IT企業よりも、アナログ企業のほうにチャンスがあるという。アナログビジネスで困難を抱えている部分を、IoTが解決できる可能性があるからだ。ただ、IoTを実現するためには、さまざまな技術とノウハウが必要になるから、アナログ企業は、まずIoTのコンサルタントに相談して、適切な専門家を集めてもらうのがよいというのだ。

 さらに、どのようなIoTビジネスが有望なのかというと、①多くの人が欲しがり②すぐに使え③ITを意識させず④便利になり⑤企業が儲かる――という5条件を満たすことだという。正直言って、私はIoTの効用は、マニアックなニーズへの対応だと考えていたが、確かに現段階では、一般大衆に訴えかけないと、利益がでない。その意味で、本書は、IoTの未来を描いた本ではなく、あくまでも現段階でIoTのビジネスに参入するためのヒントをくれる現実論なのだ。

★★半(選者・森永卓郎)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「時代に挑んだ男」加納典明(25)中学2年で初体験、行為を終えて感じたのは腹立ちと嫌悪だった

  2. 2

    ソフトB近藤健介の原動力は「打倒 新庄日本ハム」…憂き目にあった2022年の“恩返し”に燃える

  3. 3

    ドジャースが欲しがる投手・大谷翔平の「ケツ拭き要員」…リリーフ陣の負担量はメジャー最悪

  4. 4

    “お荷物”佐々木朗希のマイナー落ちはド軍にとっても“好都合”の理由とは?

  5. 5

    参政党が消せない“黒歴史”…党員がコメ農家の敵「ジャンボタニシ」拡散、農水省に一喝された過去

  1. 6

    遠野なぎこさんを追い詰めたSNSと芸能界、そして社会の冷酷無比な仕打ち…悲惨な“窮状証言”が続々

  2. 7

    巨人・田中将大「巨大不良債権化」という現実…阿部監督の“ちぐはぐ指令”に二軍首脳陣から大ヒンシュク

  3. 8

    藤浪晋太郎に日本復帰報道も、古巣阪神出戻りは「望み薄」…そして急浮上する“まさか”の球団

  4. 9

    巨人・田中将大を復活させる「使い方」…先発ローテの6番目、若手と併用なんてもってのほか

  5. 10

    自民・鶴保失言「運のいいことに地震」で苦戦の二階ジュニアに赤信号…参院選“仁義なき紀州戦争”決着か