「字が汚い」新保信長氏
パソコンの普及でめっきり手書きの機会が減った昨今。しかし、こんなふうに思ったことはないだろうか。結婚式や葬儀の受付で芳名帳を前にしたとき、あるいは取引先に一筆したためようとして「もっと字がうまく書けたらなぁ」と。
「まさに僕がそれでした。あるとき、某大物漫画家宛てに企画への協力のお願いをするために手紙を書いたんですが、ひどかったんですよ。何ていうか、子供っぽくて字が拙いんです。真面目に書いているのにふざけているようにしか見えず、心を込めたつもりの手紙がかえって失礼な感じになった。これには我ながら軽く絶望しましたね」
本書は、自分の字の汚さに愕然とした著者が、きれいな字を書けるようになりたいと右往左往した、字を巡るテン末記だ。
著者が最初に挑戦したのが、いわゆるペン字練習帳の類いである。意気込んで始めたものの、ぬぬぬぬ……とお手本をなぞっているうちに、何を書いているのか分からなくなり、ゲシュタルト崩壊。また別のテキストでは、字形を整えるポイントを覚えるも、先に進むと前にやっていたことを忘れる始末で、悪戦苦闘する。