高嶋哲夫(作家)

公開日: 更新日:

1月×日 現在、「沖縄コンフィデンシャル」シリーズを書いている。沖縄を舞台にした警察小説だ。沖縄戦では住民の4人に1人が亡くなっている。沖縄は過去と基地を抜きには語れない。

 ちょうど辺野古の埋め立ても行われている。サンゴやジュゴンが生息する美しい海の埋め立ては、僕も絶対反対。あの辺り、確たる産業もなく発展から取り残されている。

 下水道整備も遅れ、生活用水垂れ流し。遊泳禁止ってことは知っているだろうか。基地に依存している住民も多い。

 資料として森功著「狡猾の人」(幻冬舎 1400円+税)を読み返している。沖縄の基地移転にかかわった防衛事務次官の話だ。官房機密費が1億円以上、政治家の秘書官によって、沖縄に持ち込まれる現場の描写が生々しい。また、沖縄には年に3000億円余り、累計10兆円余りの振興予算が投入されている。これらの金はどこに。

 さらに、知事が変わるごとに辺野古の埋め立て地は増えている。おそらくは本土、島内の利権構造の結果だろう。次に出る小説で詳しく。

 さて、沖縄と福島は似てきていると書くと、ヤバいか。

 福島では、あの狭い地域で9兆円近い賠償金が支払われた。低レベル核廃棄物の中間貯蔵の関係で、タダ同然だった山林が俄然注目を浴びている。

 今後、福島第一原発周辺の土地と沖縄の軍用地は同じようなものとなる。つまり安全で高い利益を生む優良金融商品。

1月×日 黒古一夫著「原発文学史・論」(社会評論社 2700円+税)を買った。この本には僕の本も数冊載っている。だが、小説とドキュメンタリーを同一に論じるのはどうか。「福島第二原発の奇跡」を書いたとき、多くの技術者の話を聞いたが、「恐怖はなかった。原子炉は薬缶と同じ。沸騰したら蒸気を逃がし、水を足せば壊れることはない」という言葉は印象に残っている。いつか、「福島第一原発」を書きたい。現在出ているものとは違うものとなる。

 知ってるようで知らない話、ヤバい話は山ほどある。こうした話は、一般の人の常識や考えを変える。マスコミは知ってて公表しないのか、ただ知らないのか。

【連載】週間読書日記

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    永野芽郁“”化けの皮”が剝がれたともっぱらも「業界での評価は下がっていない」とされる理由

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    大阪万博「午後11時閉場」検討のトンデモ策に現場職員から悲鳴…終電なくなり長時間労働の恐れも

  4. 4

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも

  5. 5

    遠山景織子の結婚で思い出される“息子の父”山本淳一の存在 アイドルに未練タラタラも、哀しすぎる現在地

  1. 6

    桜井ユキ「しあわせは食べて寝て待て」《麦巻さん》《鈴さん》に次ぐ愛されキャラは44歳朝ドラ女優の《青葉さん》

  2. 7

    江藤拓“年貢大臣”の永田町の評判はパワハラ気質の「困った人」…農水官僚に「このバカヤロー」と八つ当たり

  3. 8

    天皇一家の生活費360万円を窃盗! 懲戒免職された25歳の侍従職は何者なのか

  4. 9

    西内まりや→引退、永野芽郁→映画公開…「ニコラ」出身女優2人についた“不条理な格差”

  5. 10

    遅すぎた江藤拓農相の“更迭”…噴飯言い訳に地元・宮崎もカンカン! 後任は小泉進次郎氏を起用ヘ