動物から“搾取”する産物を一掃せよ
「VEGAN=ビーガン」という言葉は“完全菜食主義”と訳されるため、肉や卵、乳製品といった動物由来の食品を排除する極端な食事法というイメージが強い。健康志向の女性に人気などと紹介されることから、ファッション感覚のライフスタイルとみる人もいるだろう。
しかし、それは薄っぺらな理解であるとしてビーガンの本質を解説しているのが、マーク・ホーソーン著、井上太一訳「ビーガンという生き方」(緑風出版 2200円+税)である。
ビーガンは単なる食事法ではなく、動物から“搾取”する産物を可能な限り一掃しようとする考え方。ひいてはそれが、環境問題や人間の差別の解決にもつながっていくという。
例えば、肉食が動物に影響を及ぼすというとき、私たちは牛や豚や鶏のみを思い浮かべる。しかし、野生動物と彼らの暮らす環境も、同じく影響を受けている。牧場主たちは“所有物”である家畜を狙うオオカミやコヨーテ、家畜の餌を狙う野生のロバや馬も同様に憎んで排除してきた。人間が肉食嗜好を続けることの影響は大きく、種の絶滅の要因にもなると本書は警告する。
ビーガンを実践していくには、食事以外の生活も変えていく必要がある。革や羊毛など動物由来の衣類は購入しないこと。動物実験をした化粧品を避けたり、動物園や水族館など動物から搾取する娯楽を応援しないことも大切だ。動物からの搾取に疑問を抱けるようになると、人種差別や性差別など、人間に対する支配や不平等の問題にも無関心ではいられなくなるだろう。
ビーガンは何かを断念することではなく、新しい価値観に出合うことだと本書。ビーガンの入門書として役立ちそうだ。