「よく使う部分は発達して子に遺伝する」は誤り
ダーウィンによる「種の起源」が出版されてから今年で160年。現代の進化学は大きく進歩し、ダーウィンの進化論とは異なっている。しかし一方で、彼の学説は後の人に受け継がれ、現代の進化学の礎となっている。
更科功著「進化論はいかに進化したか」(新潮社 1300円+税)では、ダーウィンの進化論について考察。現在ではダーウィンからどこがそのまま受け継がれ、どの部分が捨てられているのかなどを解説する。
ダーウィンの業績でもっとも有名なものは、進化のメカニズムとして自然選択を提唱したことである。自然環境が生物個体の変化を選択することで、生物に有利な変異の保存と不利な変異の排除が起こり、生物が進化していくというものだ。
実はこの変異について、ダーウィンの学説には誤りがある。「種の起源」では、体の中でよく使う部分は発達して子に遺伝するとし、その例として牛やヤギの乳を搾る地域ではその乳房が大きくなることを挙げている。しかし現代では、その変異は人間がそういう牛やヤギを選択した結果とされ、否定されている。
一方、ダーウィンが世界で初めて提唱した、ひとつの種が枝分かれ的に進化するという考えは、現代にも受け継がれている。例えば、ある種が広い範囲に連続的に分布し、両端では環境が大きく異なる場合、それぞれの環境に適応しながら種の分化が進行するという学説だ。この進化のメカニズムの例は近年、アフリカのタンガニーカ湖に生息するシクリッドという魚に実際に確認されたそうだ。
ダーウィンの進化論をもとに、さまざまな生物の進化史も紹介。ダーウィンや進化について親しむきっかけになりそうだ。