ダウンサイジングで悠々自適な年金生活
定年時に3000万円の貯蓄がなければ“老後破産”する。銀行や証券会社はこう強調して我々を不安に陥れているが、そんな心配はないことを教えてくれるのが、荻原博子著「年金だけでも暮らせます」(PHP研究所 800円+税)である。
明るい老後のために大切なのは危険な投資で貯蓄を増やそうとすることではなく、「資産の棚卸し」と「生活状況の洗い出し」をすること。そうすれば、実は年金だけでも十分に暮らしていけると本書。まずは一枚の紙に貯蓄から保険、不動産、ローンまですべて書き出してみる。資産と負債を“見える化”したら、金利が高いローンから返済するなど、プラスの資産を取り崩してマイナスを減らすことを考えるといい。
棚卸しにより資産を健全化できたら、次は保険料を見直す。死亡保障が高い親の保険は、子どもが社会人になった時点で削ってしまおう。日本には100万円の治療を受けても自己負担額が9万円程度になる高額療養費制度があるため、わざわざ民間のがん保険に入らなくてもなんとかなる人は多いはずだ。
保険をスリム化したら、生活費も精査してみる。1カ月の出費など把握しているという人でも、実際に精査すると驚くほど無駄が見つかるものだ。活用していない健康食品やスポーツクラブの費用をカットする、スマホと自宅のインターネット回線をセット契約する、夫婦2人暮らしになったら契約している電気のアンペア数を下げるなど、ちょっとした改善で高い節約効果がある工夫はいくらでもある。
「まとめ払い」や「振替加算」など、年金を多くもらう裏技も紹介。生活のダウンサイジングができれば、さほど老後を不安がることはないのだ。