「絶声」下村敦史著
7年前、“昭和の大物相場師”と呼ばれた堂島太平が行方不明になった。もうすぐ丸7年が経過し、失踪宣告がなされ、巨額の遺産が長男の貴彦、長女の美智香、次男の大崎正好の3人に相続されることに。正好は後妻の息子で、17年前に母と一緒に堂島家を追い出された。貴彦・美智香は自分たち親子を追いやった仇敵だが、3等分しても3億円が転がり込んでくる。三人三様、喉から手が出るほど金が必要で、互いに疑心暗鬼を抱きながら手を結ぶことになった。
あと少しで遺産が手に入るというとき、父名義のブログが更新されていたことがわかる。太平は失踪当時、末期膵臓がんを患っており、とっくに死んでいるものと思っていた3人は驚愕する。本当に太平はまだ生きているのか。このままでは遺産が水泡に帰してしまう。ブログは偽物だと証明しようと躍起になる3人だが、ブログには本人しか知り得ない事実が次々に明かされていく……。
突如現れた父の“声”に導かれるように闇へと追い込まれていく3人。意想外な結末が待ち構える極上ミステリー。
(集英社 1600円+税)