「京都祇園もも吉庵のあまから帖」志賀内泰弘著
京都の個人タクシーの運転手・美都子は、元ナンバーワン芸妓。美しさ、そして踊りでも祇園一との評判だったが、元芸妓の母親・もも吉との口論がきっかけで、転職してしまったのだ。同時に、もも吉も営んでいたお茶屋を畳み、一見さんお断りの甘味処「もも吉庵」の女将に収まってしまった。
ある日、東京からの客を「縁切り縁結び」で有名な安井金比羅宮へ案内した美都子は、参拝を待つ行列の中に見覚えのある顔を見つける。「仕込みさん」と呼ばれる、舞妓修業中の奈々江だった。今は「都をどり」の最中で祇園が最も忙しい時期であり、見かねた美都子は叱りつけてしまうが、後味が悪い。(「桜舞う 都をどりのせつなくて」)
祇園を舞台にしたハートウオーミングな連作集。
(PHP研究所 700円+税)