「トッカイ」清武英利著
京都の老舗の仏具屋に、寺を売りたいという相談が持ち込まれた。仏具屋が不動産業者の西山を紹介すると、後日、西山にこう聞かれた。
「国宝いうもんが、いくらぐらいするか、おまえ、知ってるか?」
やがて、落魄(らくはく)した名刹(めいさつ)、大雲寺から釣り鐘や十一面観音像などが消えるという事件が起きる。地価が急上昇した1989年ごろには、京都中で神社仏閣の移転話が広がっていった。
西山は僧侶や神主、祇園に食い込み、住宅金融専門会社を利用してビジネスを展開するようになる。
そして、大阪でも花街を買い占める男が現れ、日本住宅金融が特別回収隊をつくるのだった。
バブル崩壊後、不良債権回収に取り組んだ整理回収機構特別回収部の男たちの攻防を描くノンフィクション。
(講談社 1700円+税)