これからどうなる?最新人工知能特集
「動物と機械から離れて」菅付雅信著
買い物はAmazonのレコメンド、移動はグーグルマップに導かれるまま、転職や出会いまでマッチングアプリの仰せのままに生きる現代人。AIはビジネスから暮らしの隅々にまで行き渡ろうとしている。そんなAI草創期を生きる私たちの行く末はどうなり、どうすべきか。AIをさまざまな視点から考えるべく、お薦めの本を紹介する。
AIは人間を幸せにしてくれるのか?
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あらゆる分野でAIの導入が進む現代社会。AIの膨大なレコメンド情報に従うなど、私たちは己の自由意思で決断し行動するのではなく、機械が示す情報に沿って行動するだけで、日常の多くの物事がそつなく完了する世界を生きている。
著者は、AIによってもたらされる未来予測図はさまざま描かれるが、「AIは、私たち人間をしあわせにしてくれるのだろうか?」という肝心の問いについてはこれまで語られてこなかったと指摘。
自由意思を最も尊重する価値であると位置づける著者は、人工知能研究者の松原仁氏をはじめ、研究者・起業家・思想家など各界の第一線で活躍する人々を取材。そこから浮かび上がる、AIが変える未来図と、それによって変化を余儀なくされる自由意思の行方を考察したリポート。
(新潮社 2000円+税)
「文系AI人材になる」野口竜司著
AIによって職を失うのではないか。現代人、特に文系人間には不安が尽きない。しかし、著者はAIは今、エクセルのような一般的なツールになりつつあり、AIを「どう作るか」よりも「どう使いこなすのか」の方がより大きな課題だという。そんな時代に求められるのが実務現場も知っている「文系AI人材」だ。本書は、プログラミングや統計・数理の知識がゼロでもAI人材になれる文系人間向けトレーニングテキスト。
人間とAIの分業がさまざまな分野で進む中、文系AI人材が必要とされる具体的な仕事内容を解説。AI現場で働く力を身につけるには「AIの基本と作り方を知り、AIをどう活かすか企画する力を磨き、事例をトコトン知る」ことだと説く。そのステップに沿ってスキルを磨く養成講座。
(東洋経済新報社 1600円+税)
「業界別!AI活用地図」本橋洋介著
AIを導入したものの、想定した精度が出ない、投資対効果が見込まれないなどの理由から、途中で停滞してしまうプロジェクトも多数存在する。
それは、AIやその基になるデータ活用についての企画の段階で、自社や組織の課題を俯瞰的に考え、どのデータを蓄積し、どの業務を改善するAIを開発していくかのロードマップが適切に作られていないことが原因のひとつ。
本書は、AIには「どのような用途があるか」に焦点を絞り、業界業種別にその導入事例を紹介したビジュアルテキスト。データ活用やAIの適用範囲が広い流通業界をはじめ、製造やインフラ、ヘルスケアなど8業界36業種の導入事例をチャートで紹介しながら、課題が見つかるよう示す。プロジェクトの企画や進行担当者必見。
(翔泳社 2400円+税)
「教育激変」池上彰、佐藤優著
「AI時代に活躍できる人間を育てる」という趣旨で抜本的改革を目指した大学入試の新制度が迷走。本書は、2人の論客が注目の教育改革をテーマに論じた対談集。
官僚の不祥事や、その劣化ぶりを指摘し「教育がそうした劣化を招いているとするならば、それを食い止め、国を建て直す作業もまた、教育によってなされなければならない」(佐藤優氏)と、教育改革の必要性を論じる。
一方で、2020年度から順次適用される新たな学習指導要領の指針である「アクティブ・ラーニング」について検討し、問題は「教える側がそういう授業を受けてきたわけではない、という現実があること」(池上彰氏)と指摘。
現在の教育の現実とその問題点を論じた上で、大学入試センターの山本廣基理事長を招き新制度についても議論を交わす。
(中央公論新社 840円+税)
「AIの時代と法」小塚荘一郎著
AIが法の世界にどのような問題をもたらすのかを考察し、対処の道筋を提示する法学テキスト。
例えば、自動運転の技術が完成すると、自動車メーカーは自動車という「モノ」を造るのではなく、消費者に自動車に乗って移動する「サービス」を提供する業態へと変わっていくと考えられる。
また、音楽やコミックの配信サービスのように提供される情報処理が端末上ではなく、クラウド上で行われるという変化も起きている。さらにデータを中心とした取引がモノの形をとらずに行われるようになると、取引のルールは技術的な仕組みによって決まってしまう部分が大きくなる。
この「モノからサービスへ」「財物からデータへ」「法や契約から技術へ」の3つの大きな変化が法に及ぼす影響を現実社会の出来事を例に検討する。
(岩波書店 840円+税)