「世界で一番美しいタトゥー図鑑」クリス・コッポラ著 森本美樹訳
入れ墨は、日本ではいまだに闇社会を連想させるからか、銭湯やプールなどご法度のところも多い。しかし、紀元前2100年ごろの遺跡から入れ墨が入ったミイラが出土するほど、その歴史は古い。
そして、ここ20年ほどで入れ墨はタトゥーとなり、新しい時代に突入したという。技術が向上し、アートとして変化するとともに、あらゆる地域に広がりを見せている。本書は、人間の体をキャンバスに、自由自在に自分たちの世界を描き出す現代を代表するタトゥーアーティストたちの作品を集めた図鑑。
ドイツのコンビ、ファルコ&シモーネが発案した「トラッシュ・ポルカ」は、まさにアート系タトゥーの真骨頂だ。さまざまな印刷物から得た素材をコラージュ風に組み合わせる手法によって生み出される作品は唯一無二。ブラックとグレーによって広がるモノトーンの世界に血を連想させる赤を配し、スカルデザインとメッセージを彫りこむその作品は、どこか暗黒世界を思わせる。
かと思えば、日本のナオキの作品は、アニメキャラクターのような少女や動物たちがカラフルに描かれる。だが、よく見ると、かわいさの中にどこか毒が潜んでいる。
アメリカ・テキサス州オースティンを拠点に活動するスコット・エリスは、あらゆるスタイルの彫りを学んだ末に、最近は日本の伝統的な入れ墨「和彫り」に行き着いた。有名な浮世絵師たちの作品に影響を受けたというその作品は、日本人の目には懐かしくも新鮮に映るだろう。
他にもドットワークのスペシャリスト、エル・パットン(フランス)や、幻想的なデザインで魅せるポーランド出身のアガ・ムロコウスカら斯界の第一人者44人の作品が勢ぞろい。
一読すれば、タトゥーに対する認識が一変する。
(エクスナレッジ 2800円+税)