「世界でいちばん変な虫―珍虫奇虫図鑑」海野和男/写真と文
地球上でもっとも繁栄している生き物である昆虫は、名前を付けられたものだけでも120万種。他の動物に比べ、けた違いの多様性を誇っているのは、その小ささゆえだという。限られた場所でほんの少し生き方を変えるだけで多様な種、特殊な種が生息できるため、昆虫は本質的にはどれも珍虫奇虫といってもいいのだとか。
本書は、その中でも特別に珍しい色や模様、姿かたちをしている昆虫をはじめ、仲間に比べとびきり大きい昆虫や変わった生態の昆虫など、230種を網羅した写真図鑑だ。
その興味深さは、表紙に登場する昆虫を見ただけでもお分かりだろう。
頭頂部から生える突起に、毛が生えた目玉にも見えるコブを4つもつけ、宇宙人と言われたら納得してしまいそうな、この想像を絶する生き物は、なんとセミの仲間。中南米に生息する「ヨツコブツノゼミ」である。
同じく中南米生息のチョウ「ウラモジタテハ」は、後翅の裏面の白地に黒の渦巻き模様が、数字の88や89に見える。はねの縁取りはブルー、渦巻きの一部は赤色で彩られ、アートそのものだ。
熱帯アジアの「サンヨウベニボタル」のオスは普通のベニボタルの姿をしているが、メスは、なんとオスの5倍の大きさで、名前通り古代の生き物である三葉虫に似た姿。あまりにも姿かたちが違うのでオスとメスが同じ種類か確かめるため、DNA鑑定が必要なほど。
他にもソロモン諸島特産の鳥に間違えられるほど大きい「ビクトリアトリバネアゲハ」や、ヘラジカのような角を持ちオスはその角を突き合わせて喧嘩をするというパプアニューギニアの「シカツノバエ」など。とにかくどれも見たことのない昆虫ばかりで、子供だけでなく、大人も興奮して見入ってしまうおすすめ本である。
(草思社 3200円+税)