「装飾古墳の謎」河野一隆著

公開日: 更新日:

 有名な高松塚古墳やキトラ古墳のように彩色壁画を持つ古墳は「壁画古墳」と呼ばれる。一方で、古墳内の石室や石棺、横穴など埋葬施設の内外部に、彫刻や線刻、彩色などの装飾技法によって図文を表現した古墳を「装飾古墳」と呼ぶという。

 たとえば、熊本県の井寺古墳の石板に施された図文は、直線と弧線を複雑に組み合わせ赤と白で塗り分けている。「直弧文」と呼ばれるこの図文の再現には代数幾何学の知識が不可欠で、当時の人々が死者のための空間を念入りに設計、演出していたことが分かる。この装飾古墳、なぜか古墳時代の中枢であった近畿地方には少なく、九州や関東に集中しているという。

 古代のアートともいえる装飾古墳を紹介するとともに、世界各地の装飾墓と比較しながら、その誕生の謎に迫る考古学本。 (文藝春秋 1595円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    さすがチンピラ政党…維新「国保逃れ」脱法スキームが大炎上! 入手した“指南書”に書かれていること

  2. 2

    国民民主党の支持率ダダ下がりが止まらない…ついに野党第4党に転落、共産党にも抜かれそうな気配

  3. 3

    ドジャース「佐々木朗希放出」に現実味…2年連続サイ・ヤング賞左腕スクーバル獲得のトレード要員へ

  4. 4

    来秋ドラ1候補の高校BIG3は「全員直メジャー」の可能性…日本プロ野球経由は“遠回り”の認識広がる

  5. 5

    ギャラから解析する“TOKIOの絆” 国分太一コンプラ違反疑惑に松岡昌宏も城島茂も「共闘」

  1. 6

    国分太一問題で日テレの「城島&松岡に謝罪」に関係者が抱いた“違和感”

  2. 7

    小林薫&玉置浩二による唯一無二のハーモニー

  3. 8

    脆弱株価、利上げ報道で急落…これが高市経済無策への市場の反応だ

  4. 9

    「東京電力HD」はいまこそ仕掛けのタイミング 無配でも成長力が期待できる

  5. 10

    日本人選手で初めてサングラスとリストバンドを着用した、陰のファッションリーダー