「東京名建築さんぽ」大内田史郎著 傍島利浩写真
「東京名建築さんぽ」大内田史郎著 傍島利浩写真
東京は、関東大震災と太平洋戦争時の空襲で2度の焼け野原を体験。その後、果てしないスクラップ&ビルドを繰り返し、今では世界有数の大都市に数えられるまでになり、今も日々変貌している。
しかし、街中を歩いてみると、近未来的なビルの合間に、焼け野原を経験した建物がじつは意外と多く残っている。
そんな明治から昭和に建てられた建物の中でも、名建築の誉れ高い美しい建物を紹介するビジュアルブック。
国立天文台の三鷹キャンパス構内にはおよそ30の施設があり、そのうち大正から昭和初期に建てられた10棟の建物は、国の登録有形文化財にも指定されている。そのひとつ、日本最大の屈折望遠鏡が備えられた大赤道儀室(1926年竣工)は、直径14.5メートルの巨大な木製ドームを持つ2階建て鉄筋コンクリート造りの建物。
当時、建設業者には大ドームをつくる技術がなかったため、造船技師が設計したといわれるこのドームの内側は、木組みの規則正しいリズムが宗教施設ばりの重厚さと気品を建物に添えている。
ほかにも、建設から100年近くが経っているとは思えぬほどモダンな「旧多摩聖蹟記念館」(1930年竣工)や、設計者の内田祥三氏にちなんで「内田ゴシック」と呼ばれる壮麗な外観とぜいを尽くした内装の「旧公衆衛生院」(1938年竣工、現在は港区立郷土歴史館)、1933年の竣工当時は建物の上にそびえる望楼から東京湾を望めたことから「岸壁上の灯台」とも呼ばれ、今も現役の消防署として活躍する「高輪消防署二本榎出張所」など。東京とその近郊に点在する43物件を取り上げる。
誰もが知る有名な建物のほか、旅館やかつては個人の邸宅だった物件などもあり、東京散歩のお供におすすめ。(エクスナレッジ 1980円)