公開日: 更新日:

「箱根駅伝 100年史」工藤隆一著

 正月の風物詩といえば初詣と箱根駅伝。100回大会でさらに盛り上がりそうだ。

  ◇  ◇  ◇

「箱根駅伝 100年史」工藤隆一著

 そもそも大学生の関東大会に過ぎないはずなのに、箱根駅伝といえば全国規模で人気、いまや正月には欠かせない風物詩だ。加えてそれほど注目のイベントにもかかわらず、高校野球のように彗星のごとくヒーロー選手が登場することもない。

 にもかかわらずの大人気はなぜか。それは「襷をつなげる」行為が「個人競技でありながら団体競技でもある」点で日本人の感性に響くからではと著者は言う。

 日本独特の駅伝競技は、明治維新で皇居が京都から東京に移ってから半世紀を記念して大正6年、東海道をつなぐ形で始まった。その後、米大陸をマラソンで横断する計画をぶち上げた「いだてん」金栗四三が、ロッキー山脈を越える練習のために「天下の険」箱根の峠を越えることを構想したところから箱根駅伝が生まれた。

 全国規模の人気が生まれるきっかけは1953年に始まったNHKのラジオ中継。テレビ放映は79年からだが、実は放送したのはほとんど視聴率が取れないことで知られた東京12チャンネル(現テレビ東京)。ここで重ねた録画中継の工夫がのちの大人気につながったらしい。

 100年の歩みはまさに現代ニッポンの歴史そのもの。多数のエピソードをまじえた本書は正月の読書にふさわしい。

(河出書房新社 979円)

「最前線からの箱根駅伝論」原晋著

「最前線からの箱根駅伝論」原晋著

 駅伝はあれほど盛んなのに日本のマラソンは往時の見る影もない。おかげで「駅伝が日本のマラソン界をダメにした」という批判が絶えない。

 それに真っ向から反論するのが本書の著者。2009年、就任5年で33年ぶりに箱根駅伝に出場させた青山学院大をその後6年で初優勝に導き、以後、6度の総合優勝を監督として果たした。

 駅伝を主軸に強化しないと「日本の長距離界の未来はない」と断言する。理由が面白い。技術論ではなく、「国民に愛されているから」。箱根駅伝のテレビ中継視聴率は実に30%。それほどまで注目されているからこそ、才能ある若者たちが続々と集まってくるというわけだ。

 著者によれば秋から冬にかけては出雲駅伝、全日本大学駅伝、そして箱根駅伝のあと、2月にマラソンがある。この流れが日本の長距離陸上界にとって最適の強化スケジュールになっているという。

 自信たっぷりの直言は実績ゆえ。この正月の青学大に注目してみようではないか。

(ビジネス社 1650円)

「箱根駅伝に魅せられて」生島淳著

「箱根駅伝に魅せられて」生島淳著

 子どもの頃から駅伝大好き少年だった著者。ラジオ中継を聞いた小学生時代には「箱根駅伝すごろく」を自作していたという。大学生になるとテレビ中継が始まり、広告代理店でのコピーライターを経て平成の半ばでスポーツライターに転身した。そんな人の著作だけに、行間から“駅伝愛”があふれているのが伝わる。

 なにしろ第1章からして「箱根を彩る名将たち」と題し、各大学の名物監督のインタビュー・ルポがずらりと並ぶ。選手より先に監督の話が出るあたり、いかにも大学スポーツという趣。

 学生たちは4年で次々入れ替わるが、監督は10年ぐらいのスパンでものを見ている。

 校風もそれぞれ異なるため、違いや個性をいかにわかりやすく伝えるかは単なる駅伝ファンの域を超える技が求められる。

 青学大は鉄の規律で有名だが、早稲田は監督と選手が上下関係より先輩・後輩のような間柄という。駒大の大八木監督は選手との出会いで自分の方法論も変わったと告白する。

(KADOKAWA 990円)

【連載】本で読み解くNEWSの深層

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    山本美月は九州の女子校で偏差値トップ「筑紫女学園」から明大農学部へ 祖父も生物教師の“リケジョ”

  2. 2

    北島三郎(3)「北島ファミリー」の長女・原田悠里が語る御大

  3. 3

    ドジャース球団売却の可能性…共同オーナーに当局捜査、レイカーズは買収10カ月で手放す

  4. 4

    バナナマン日村が簡単に復帰できそうにない「もう1つの理由」…レギュラー11本抱える人気者のジレンマ

  5. 5

    朝ドラ「風、薫る」“シマケン”はブーイングも…Aぇ! Group佐野晶哉には「オファー増」の追い風

  1. 6

    高市政権が国民資産「強奪」計画! 現預金1100兆円を狙い撃ち、放漫財政のツケを庶民のフトコロに押しつけ

  2. 7

    “世界ランク1位”の座を捨てて甲子園へ 享栄・上江滝拓未「将来はプロかバスの運転手」

  3. 8

    特殊清掃員が見た「孤独死」の壮絶現場…発見まで2年、遺体は“粉”に「誰にでも起こり得る」

  4. 9

    “寝てない自慢”だった高市首相が「漢方で熟睡」だって…話が変わっている! と批判殺到

  5. 10

    阿佐ヶ谷姉妹にさらなる飛躍のチャンス!「団地のふたり」視聴者から上がる《通じるものがある》の好反応