「根津や孝助一代記」江上剛著
「根津や孝助一代記」江上剛著
日本橋の薬種商「養生屋」の使用人・孝助はよわい十六。品行方正な働きぶりで丁稚たちや主人からも厚い信頼を受けていた。
ある日、丁稚の末吉が、朝準備の時間になっても起きてこない。心配して様子を見に行くと、脈が弱く、脚もむくんでいる。原因不明の病気“江戸わずらい”にかかってしまったのだ。
ところが、意地の悪い番頭は「里に戻せばいい」と末吉を見捨てようとする。放っておけない孝助は、1週間だけ末吉を預かることを許されたものの、治療法が分からない。このとき、女中や名医・徳庵の力を借りて作った治療薬は、やがて江戸中の貧者を救うことに。「安くても効く」その薬とは……。
両親の顔さえまともに分からない貧窮で育った孝助が実直に立身出世の道を開く、感動の時代小説。
(祥伝社 880円)