作家江上剛氏「環境問題の今が分かる」
「脱炭素革命への挑戦 世界の潮流と日本の課題」堅達京子+NHK取材班
(山と溪谷社)
株式市場はESG(環境・社会・ガバナンス)投資ばかりが注目されている。地球温暖化など環境悪化が人類存続の大問題となり、持続可能な社会にしなければならなくなったからだ。
ESG投資は2018年には3100兆円を超え、その勢いは止まらない。株式投資をするならESGを実践している会社でなければならないという考えが、今や一般化している。
本書を読めば、環境問題の今が分かり、日本が対処しなければならない課題が明確になる。いかに環境問題が切迫した状況にあるのか。地球の温度が1.5度以上上昇するティッピングポイント(臨界点)が28年にも到来するのだ。これを超えると生物の7~9割は死滅するという。本当は50年にカーボンニュートラル達成などと悠長なことは言ってられないのだ。
本書には各国の脱炭素への取り組みばかりではなく日本のイオンの「脱炭素ビジョン2050」の取り組みなどが詳細に描かれている。イオンは店舗や事業から排出するCO2を50年にゼロにする具体的な取り組みを開始したのだ。日本企業は「脱炭素」に早急に舵を切らなければ、早晩、消費者、取引先、株主などのステークホルダーから見放され、衰退の道をたどることになるだろう。本書を読み、「脱炭素」の深刻な現実を知るべきである。