戦争映画「フューリー」 激闘するシャーマンvsタイガーI型
戦車が暴れ回る映画は「鬼戦車T―34」(64年)や「バルジ大作戦」(65年)、「プライベート・ライアン」(98年)など数多いが、シャーマンとティーガーの実力差をここまで描いた作品は珍しい。大砲の弾にびくともしない敵に勝つには後部を狙うしかないため、シャーマンは戦闘機のように回り込んでバックを取ろうとする。俯瞰(ふかん)撮影のおかげで戦車2両の位置関係が分かりやすい。
終盤の攻防戦はご都合主義な面もあるが、前半は顔から剥がれた皮膚やブルドーザーで埋められる死体の山、ナチ親衛隊によって縛り首にされたドイツ国民など戦争の悲惨さが描かれている。
コリアーはノーマンを羽交い締めして捕虜を射殺させるわ、「おまえがヤラなきゃ俺がヤる」と強姦をちらつかせるわと無法ぶりも発揮。善し悪しは別として一味違うキャラ設定だ。
戦争映画は野原や森が続くものだが、本作はエマのアパートが入ることで人間同士の皮肉な対立がリアルに感じられる。そのことが悲劇性を高めているように思えるのだ。 (森田健司)