「誰も知らない」大人がセックスすれば子供が苦しんで死ぬ
2004年 是枝裕和監督
是枝裕和監督の「万引き家族」がカンヌ国際映画祭のパルムドールを受賞。先週「幻の光」「歩いても 歩いても」など彼の7作品がBDで発売された。そのひとつが本作。柳楽優弥が14歳でカンヌの主演男優賞を受賞した。
東京の安アパートに12歳の明(柳楽)たち4人の子供が母けい子(YOU)とともに引っ越してくる。4人はけい子の子だが、父親はそれぞれ違う。全員が学校や幼稚園に通わせてもらっていない。けい子は働きながら子供を育てるが、ある日仕事と称して出ていく。実は新しい男をつくって相手の家に入り浸っているのだ。
だから1カ月後に帰宅してもまたすぐに出ていく。「彼にあなたたちのことを話して一緒に暮らせるようにする」というが、明はその言葉を信じていない。やがてけい子は音信不通になり、明たちは電気、ガス、水道を止められるのだった。
大人のエゴが子供を苦しめる物語だ。けい子は際限なくセックスし、次の恋愛に没頭する。明が抗議すると「私が幸せになっちゃいけないのぉ?」と逆ギレ。子供たちの父親はタクシー運転手やパチンコ店員で、明に頼られると逃げ口上で責任を回避しようとする。子供たちはけい子の言いつけを守って行政の助けを求めない。汚れた衣服を身にまとい、腹をすかせる姿が哀れだ。