「ある殺し屋」時系列を崩した裏切りのいきさつが面白い
1967年 森一生監督
市川雷蔵が殺し屋を演じる。
小料理屋を営む塩沢(雷蔵)はケチな美人局(つつもたせ)に因縁をつけられてこれを撃退。「強い男が好き」というズベ公の圭子(野川由美子)は勝手に塩沢の家に居候する。実は塩沢にはもうひとつの顔があった。殺し屋だ。
彼は木村組の前田(成田三樹夫)から敵対する暴力団・大和田組の組長を殺してくれと頼まれるが、これを一蹴。だが木村組長(小池朝雄)から直々に頼まれ、報酬2000万円で引き受ける。塩沢は土建屋のパーティーに潜り込んで大和田の殺害に成功。
殺しのあと前田が自分を弟分にしてほしいと頼み、大仕事を持ちかける。大和田組の麻薬取引を襲って2億円分のヤクを横取りしようというのだった……。
映画において殺し屋は絵になる存在だ。日本では加山雄三の「狙撃」や松田優作の「遊戯」シリーズがあったが、本作は殺し屋が小料理屋の店主という点がユニーク。板前と殺し屋――。不釣り合いのもの同士が共存することで殺しの世界がより謎めいて見える。