南北両極を初めて単独徒歩横断 冒険家・大場満郎さんは今
■「30代、40代は恋愛どころじゃなかった」
さて、大場さんは、最上町の農家に、姉と弟に挟まれた長男として生まれた。
冒険家を志したきっかけは、西へ30キロほど離れた真室川町に住んでいた故・沓沢朝治さんとの出会いだった。
「沓沢さんは日本最後の鷹匠といわれ、62年に放送されたドキュメンタリー『老人と鷹』(日本テレビ系)のモデルです。本作は、この年のカンヌ国際映画祭テレビ映画部門でグランプリを受賞したくらいの名作なんですが、僕は中学2年の時にお会いして、何度も通うようになりました。自然とともに、自由に生きる姿に憧れたんです」
当時、最上町に限らず雪国の農家は、冬になると都会へ出稼ぎに出た。大場さんはそれがイヤで、無添加のエサで平飼いする養鶏業を始め、それが一時成功した。
だが、周囲の農家の嫉妬と軋轢から、事業は中断。ついには、集落から飛び出し、農業視察を兼ねてアマゾン川6000キロをイカダで下る冒険を敢行した。
「今から35年前、83年ですね。それが第一歩でした」