「夜空」でレコ大受賞の五木ひろしは野口プロ所属の第1号
1973年の大晦日。帝国劇場に詰めかけた2000人超満員の観衆はもちろん、全国のお茶の間の視聴者は、「日本レコード大賞」の発表を今や遅しと待っていた。
午後8時30分。司会の高橋圭三の手に封が渡された。高橋がゆっくり封を開けて一枚の紙を取り出した。
「第15回日本レコード大賞の発表です」
場内は暗転、ピンスポットが四方八方に客席を駆け巡ると、ドラムロールの音が響き渡った。騒がしかった場内は静寂に包まれた。
おもむろに、ドラムロールが止まる。
「今年のレコード大賞は……」
高橋圭三は一拍置いてこう告げた。
「『夜空』を歌った、五木ひろしさんです!」
照明は客席の五木ひろしに当てられた。
「おめでとうございます!」
顔をクシャクシャにした五木ひろしが、よろめくようにステージに上がると、その傍らには親友である大相撲横綱の輪島大士、巨人軍のエース堀内恒夫とともに沢村忠の姿があった。