海老蔵が“太陽”なら菊之助は“月” 3年ぶり「團菊祭」で見せつけたオーラと熱気
菊之助は五代目菊五郎のために書かれた『土蜘(つちぐも)』で主役。前半は叡山の僧として登場し、後半はその正体の土蜘の精。海老蔵の「暫」は太陽のようにエネルギーを外に放射させるが、菊之助はエネルギーを内に秘める。自ら発光するのではなく、源頼光を演じる菊五郎の光を受け取めて反射させる。神秘的で静謐(せいひつ)な中に激しさがある。海老蔵が太陽なら、菊之助は月だ。
第三部は、海老蔵・菊之助の次の世代による『弁天娘女男白浪』。五代目菊五郎のために書かれた芝居で、その子孫である尾上右近が主人公・弁天小僧菊之助を演じる。自主公演では演じているが、本公演では初めて。それも花形歌舞伎ではなく、歌舞伎座の團菊祭という大舞台での大抜擢だ。最近の歌舞伎座は、攻めの座組をするようになってきた。
南郷力丸は坂東巳之助、日本駄右衛門は坂東彦三郎、忠信利平は中村隼人、赤星十三郎は中村米吉。29歳の右近をはじめ、みな若い。だが五代目菊五郎が初演したときは19歳だったから、この配役こそがオリジナルに近いのかもしれない。若者が悪事を企む物語だと、よく分かる。