海老蔵が“太陽”なら菊之助は“月” 3年ぶり「團菊祭」で見せつけたオーラと熱気
今月の歌舞伎座は3年ぶりに開催された「團菊祭」。場内に特別の飾りがあるわけでも口上があるわけでもない。他の月と変わりはないのだが、独特の空気が流れるので不思議なものだ。
第二部では、将来の團十郎と菊五郎である市川海老蔵と尾上菊之助が、それぞれの家の芸を競う。
■「暫」で見せつけた圧倒的オーラ
昨年7月以来の歌舞伎座登場となった海老蔵は「歌舞伎十八番」の『暫(しばらく)』。以前は他の家の役者も演じていたが、1995年以降は十二代目團十郎と海老蔵しか演じていない。まさに成田屋のみが演じることのできる演目。
海老蔵が登場するのは中盤からだが、花道を出てくると、空気が一瞬にして変わる。突然、照明が明るくなったような錯覚に陥る。劇場内に太陽が輝いているようだ。なんというオーラ、そして熱気。
物語はないに等しい。人間離れした異様な扮装と大音量の海老蔵に、神が見える。近代的西洋演劇の常識では、これは演劇ではない。これこそが「歌舞伎」であり、歌舞伎役者のなかでも選ばれし者にしか演じられない──ということを再確認させる。