「教場0」に見た俳優・木村拓哉の真骨頂 表情を変えず、少ない言葉で伝える凄み
過去の「教場」(フジテレビ系)や「教場Ⅱ」(同)の主な舞台は警察学校だった。そこには木村拓哉が演じる教官・風間公親と、多彩な訓練生たちによる群像劇の面白さがあった。
現在放送中の「風間公親-教場0-」は、風間が鬼教官になる以前の物語である。彼が立っているのは生徒の前ではなく、現実の事件現場だ。しかも捜査をしながら刑事指導官として若手を育成していく。個別の事件の解決もさることながら、風間がいかにして風間になったのかが興味深い。
7話と8話に登場したのは、新人刑事の鐘羅路子(白石麻衣)だ。ダメ男とばかり付き合ってしまう悪癖はあるが、風間に言わせれば「男女の感情について独特の感性とアンテナ」を持っている。
1人暮らしの小田島澄香(ソニン)が変死体で見つかった事件。現場の様子を観察した路子は、容疑者が男性だと指摘する。実際、犯人は澄香が行っていた違法薬物を扱うビジネスのパートナー、名越哲弥(小池徹平)だった。
彼が病的な心配性であることをテコにした逮捕劇。また澄香が密かに仕掛けた名越への逆襲。ベテラン脚本家、君塚良一の手腕が冴える。
このドラマでの木村は笑わない。いや、ほとんど表情を変えない。それに発する言葉も少ない。しかし、風間の胸の奥底にある感情はしっかり伝わってくる。「俳優・木村拓哉」の真骨頂だ。