気軽に始めて依存症に 医師が出す“軽い安定剤”の落とし穴
「最近、眠れないんです……」「では、軽い安定剤でも出しておきましょう」――。クリニックでこんなやりとりがあったら要注意だ。
東京女子医大東医療センター精神科の山田和男教授は、冒頭のやりとりを「当院に来る患者さんの話を聞いていると、そうやって睡眠薬を処方されているのはよくあること。『軽い安定剤』のほかに『導入剤』と表現する医師もいるようです」と指摘する。
患者は「軽い安定剤」や「導入剤」が、「睡眠薬」(睡眠障害改善薬)だとはあまり認識していない。気軽な医師の言葉に従い、気軽に飲み始める。
睡眠薬は、継続して飲むと耐性ができて、従来量では眠れなくなる。または耐性はできていなくても、飲まないと眠れなくなる。いずれも依存症だ。
睡眠薬に詳しい精神科医が介入しなければ、睡眠薬を手放せなくなってしまう。山田教授は、大学病院という場所柄、難治性の精神疾患を抱える患者も多数診ている。それでも、睡眠薬はそうそう簡単に出す薬ではないという。
「少なくとも『眠れない』というだけでは、睡眠薬は処方しません。眠れない患者の多くは、不眠恐怖症か睡眠相後退症候群。睡眠に関する正しい知識を身につける睡眠衛生指導などが先行します」