薬でも改善しない…がんやうつでも認知症と似た症状が出る
まず挙げられるのは、がんをはじめとしたさまざまな内臓疾患。がんでも異常行動は起こることがあるし、さまざまな疾患による薬の服用が異常行動を招くこともある。たとえば糖尿病の薬で血糖値を下げるとボケの症状をきたしたり失禁したりすることがある。「眠れない」からと安定剤を服用すると、記憶障害が生じたり昼間でも夢と現実の区別がつかなくなったりすることも珍しくない。高齢者にかぎらず体に不調を抱えていれば、誰でも多かれ少なかれ言動や生活態度に変化が生じる。それまで楽しんでいた趣味に興味を示さなくなったり、コミュニケーションがうまくいかなくなったり、ものごとに対して消極的になったりするのは当然である。
とくに高齢者の場合、がんをはじめとした内科的病変に対する自覚症状への感度が鈍くなっているからまわりに不調を訴えたり、受診したりといった行動ができない。「自分のヘン」に気づかないのである。
■薬で改善しなければ誤診の可能性
また「老人性うつ」を認知症と誤診されてしまうこともある。老人性うつの症状は認知症のそれと非常によく似ている。私は現在まで30年近く老年精神医学に携わり数多くの高齢者を診てきたが、うつ病が原因で言動や生活スタイルに大きな「ヘン」が生じたケースも少なくない。