ヘルシーな食材 ラム肉をおいしく食べやすくいただくコツ
カルニチンというアミノ酸にダイエット成分
肉の中でも特に羊肉が好き、という人は多い。羊肉独特の香味がいいからだろう。私も大好きである。
牛、豚、鳥、羊と比べると、肉の主たる成分の筋肉タンパク質にはほとんど差がないが、食べると味に大きな違いがある。これはそれぞれの肉に含まれる脂肪の差による。そして脂肪はエサの影響を大きく受ける。豊かな牧草を食べて育った羊の肉は香ばしい香りがする。特に、分岐鎖脂肪酸と呼ばれる特別な油脂成分が香味成分の正体だ。この脂肪酸、ちょっと構造が違うだけで、羊肉のよい香りになったり、はたまた、靴下のいやな臭いになったりする。
ところで、同じ羊肉でも、ラムとマトンの違い、わかりますか。ラムは生後1年未満の若い羊、マトンはそれ以上の羊。当然ながら、ラムの方が軟らかく、くせがない。マトンはそれなりにしっかりとした味になる。どちらを選ぶかは好みの問題だが、幼い羊をどんどん食用にしてしまっているという人間の強欲さは覚えておいた方がいいかもしれない。
先に、タンパク質にほとんど差はない、と書いたが、羊の肉にはちょっとした特質がある。それはカルニチンというアミノ酸が多いこと。カルニチンは、細胞の中でミトコンドリアが脂肪を燃やすとき手助けする作用がある。なので、ダイエット成分といえる。ただし、ラムを食べすぎてしまえば元も子もない。
▽福岡伸一(ふくおか・しんいち)1956年東京生まれ。京大卒。米ハーバード大医学部博士研究員、京大助教授などを経て青学大教授・米ロックフェラー大客員教授。「動的平衡」「芸術と科学のあいだ」「フェルメール 光の王国 」をはじめ著書多数。80万部を超えるベストセラーとなった「生物と無生物のあいだ」は、朝日新聞が識者に実施したアンケート「平成の30冊」にも選ばれた。
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