改めて知っておきたい甲状腺がんの問題 TBS「報道特集」が炎上
一方の福島では、19歳以下の中央値で4.2ミリシーベルト。最も影響を受けやすい1歳児未満でも40ミリシーベルトにとどまっています。健康影響のなさは、この少なく済んだ被曝量によるでしょう。
それではなぜ診断数が増えたのか。それは、検査対象を広げたことで、「無害な甲状腺がん」を掘り起こしたのです。
甲状腺がんは、9割が乳頭がんというタイプ。超低リスク、低リスク、中リスク、高リスクに分かれ、超低リスクは命を危ぶむリスクが少なく、ガイドラインでも経過観察が推奨されます。
検査の網を広げたことで、この「無害ながん」をすくいあげてしまったのです。当然、これなら経過観察で問題ありません。
過剰診断の問題はまだあります。「無害」とはいえ、がんと診断された人はちょっと不安でしょう。それで、切除を勧められることがある。甲状腺は代謝を調節するホルモンなどを分泌する器官で、切除すると、一生ホルモン剤が不可欠に。手術で発声に関わる神経も障害され、声のかすれも生じます。手術の代償が大きく、低リスク、超低リスクは経過観察が重要なのです。小児ならなおさらでしょう。
実は韓国では、甲状腺がん検査を広く行ったことで、過剰診断・過剰治療が社会問題になりました。不要な治療を受けた人が続出したためです。薬害や健康被害の情報はとても繊細なもの。中身をしっかりと吟味する目を養うことがとても大切です。