パリ五輪観戦は経由地でも楽しむ!ドバイは「トランジット」で堪能可能? マレーシアは半日で十分
コロナ禍が落ち着いてやっと海外旅行が楽しめると思ったら、約34年ぶりの「円安」で二の足を踏んでいる人も多いだろう。そんななか、せっかく行くならお得に……と考えるが、最近注目されているのが、「トランジット」や「ストップオーバー」を利用した一度に二度三度と楽しめる旅の在り方。「トランジット」とは飛行機を乗り継ぎで経由地に一時的に滞在すること、「ストップオーバー」は乗継地で24時間以上滞在することをいう。夏休みや長期休暇なら、時間はかかるが直行便よりもエアー代を節約でき、目的地だけでなく、経由地にも入国し、観光を楽しめるのが魅力だ。
【ドバイ1日目】早朝着便ならフルに予定を入れられる
ドバイ(UAE)もその選択肢の一つだ。ドバイから8時間以内で行けるアフリカやモルジブへの旅行者や、世界情勢も影響し、日本からのヨーロッパ旅行や出張をドバイ経由で訪れる人も多いそう。今月開催のパリ五輪に関連し、「観戦客の乗継地旅行先としても注目されています」(旅行業関係者)という。
まずは「ストップオーバー」で1泊2日の旅をしてみた経験を。成田空港発(22時半)の現地早朝着便(翌5時半)を選んだので、1日目はフルで予定が入れられた。ちなみに空港では観光客に24時間有効のSIMカード(1GB)をもらえる。たいていの施設の中ではWifiが使えるので、組み合わせれば1日間ネット環境は無料で乗り切れる。
ドバイ国際空港から「ドバイ・メトロ」に乗れば主要な観光施設には移動できる。空港に着いたらターミナル1(または3)からレッド・ラインの駅に移動し、乗車。
主要観光地の「アルファヒディ歴史地区」は、数時間のトランジットでも十分立ち寄れる中東を感じられる場所だ。空港からはユニオン駅でグリーン・ラインに乗り換え、アルファヒディ駅で降りる。メトロで約30分、ちなみにタクシーでも15分(料金は日本の初乗りの3割程度と安い)ほど。
同地区は、ドバイ旧市街の一角で、19世紀中頃のドバイの伝統的な家屋や建物が残されている。ペイントが施された壁やイベントを行うギャラリーや博物館、カフェ、ホテルが並ぶ細い路地を散策したら、ランチはアルファヒディ歴史地区の路地にある趣のある「アルハイマヘリテイジ・レストラン」へ。伝統的なアラビア料理の朝食が有名らしく、早朝便でドバイ着ならお勧め。「Arabian Breakfast Tray」(AED93.45)のひよこ豆をつぶしてゴマのペーストなどを加えた「フムス」やサフランやカルダモン入りのパンケーキ「チェバブ」は個性的だがクセになる味。
人工島「パーム・ジュメイラ」には日帰りビーチクラブ
ペルシャ湾に面するドバイ。人工島「パーム・ジュメイラ」に点在する白い砂浜と透明度の高いブルーの海と敷地内のプライベートプールが日帰りで楽しめる「ビーチクラブ」が観光客に人気なんだそう。高級ホテルに滞在しなくても、短時間で利用できる。”大人の社交場”と呼ばれるだけあって、利用者が静かな時間を過ごしている。DJがかける音楽や波の音に耳を傾けつつ、サンベッド(1人用AED200~)に横になりながらの読書は優雅だ。
「Kyma Beach Club(キーマビーチクラブ)」は空港からタクシーで約30~40分で、海の向こうに高層ビル群が広がる絶景。ちなみにギリシャをイメージしたビーチクラブで、併設のレストランでは地中海料理も楽しめる。
同じく、パーム・ジュメイラの根元にあるミナセヤヒ地区。マリオット系列のホテルが3つ並ぶリゾート敷地内の「Bussola(ブッソラ)」は、プール&ビーチも目の前に広がる解放感があるレストランだ。ドバイはコンパクトながら、1万軒ほどのレストランが集まる食の都市だという。世界各国の料理が味わえることも魅力。イタリアンのこちらはリゾットやパスタに合うワインも充実する。空港からタクシーで約30~40分の距離。
【ドバイ2日目】早朝から砂漠に行って空港乗継へ
アフリカ・中東と言えば砂漠とラクダ。日本で「デザートサファリ(砂漠ツアー)」を検索して見つけた高い安全性などの受賞歴があった「プラチナムヘリテイジ」のツアーに参加(1人AED595~)。空港近くのホテルでもピックアップが可能だった。ヨルダンやイスラエル、サウジアラビアでも経験したが、どうしても節約をしようにも電車やタクシーなどの自力移動が難しいのが砂漠エリア……。ラクダに乗りたいなら日本を出る前に予約しておきたい。
今回は「ストップオーバー」の旅。夜には乗継便が出発のため空港に戻らなければならないので、砂漠キャンプで日の出を見ながら朝食を食べられるプランに。ピックアップは早朝5時半だが、砂漠まで1時間ちょっとあるので移動中は睡眠がとれる。
自然保護区内の砂漠エリアで、アラブの半遊牧民のベドウィンの伝統文化を体験できる。日の出を浴びながらラクダに乗って砂漠を横断したり(15分くらい)、ファルコンショー、伝統文化のダンスショーを見たり、ヴィンテージのランドローバーに乗ってドライブを楽しんだ。
参加者らと絨毯に円をつくって座る。ともに味わうベドウィンの朝ごはんはおいしい。ヒツジやヤギと遊牧生活を送ってきた歴史から、乳製品が欠かせない。複数のチーズとひよこ豆のサラダ、デーツのシロップがかかった揚げパンのようなもの、ラクダのミルクやアラビックコーヒーなど日本では味わえないものが多いのもうれしい。
ハイエンドのイメージがあるが東京と変わらない滞在費
帰り支度をして、水族館や動物園も入っている巨大ショッピングモール「ドバイモール」でお土産を探した後は、ドバイのシンボル「バージュ・カリファ」を目の前に、高層ビル群を一望できるレストランで締めくくり。「Address Sky View(アドレス・スカイビュー)」54階のルーフトップレストラン「Celavi(セラヴィ)」は、シンガポールの「マリーナベイサンズ」の屋上レストランと経営が同じ。
こちらは韓国出身のシェフが手掛けるアジア料理の創作メニューが絶品で世界からファンが訪れるらしい。夜なら1人3万円以上するから手が出せなくても、ビジネスランチ(平日昼12~15時)なら前菜・メイン・デザートのコースでAED140~(約6000円)。ロケーション込みでこの価格ならお得だ。
ドバイ旅は高価格のイメージが強いが、低価格のホテルやレストラン、観光施設も意外と多いのだ。ハイエンドだけではなく、リーズナブルな旅もできる。またイスラム教国ながらホテル内のレストランなど一部ではお酒も飲める。30日以内の滞在ならビザも不要で、スークを除けばクレジットカードで事足りるので現金を持たなくて遊べるのも、“乗継地旅”として便利なところだ。
【シンガポール編】滞在8時間
シンガポールもビザは不要。ただし、チャンギ国際空港から市内の主要観光地までは少なくとも1時間はかかるので、5時間以内のトランジットなら、空港直結の複合施設「ジュエル」で世界最長の屋内滝や庭園などを楽しむのがいい。
6時間以上あるなら、おすすめの観光スポットがある。まずは入国審査のゲートに進み、出入国カードをタブレットで記入。15分程度で出国できた。チャンギ国際空港から電車(MRT)で東西線に乗って「タネス」駅へ。ダウンタウン線に乗り継いで「ハウパービラ」駅に向かう。1時間半から2時間かかるが、駅を降りるとすぐにあるのがB級観光スポット「ハウパービラ」だ。
タイガーバームの創始者が中国伝承の十大地獄を知ってもらうために一般開放(無料)したテーマパークで、地獄を模したオブジェが立ち並んでいる公園。併設の「地獄博物館(へルズミュージアム)」(大人20ドル)には地獄に送られた罪人が模型でリアルに再現されており、道徳が学べる。
その後、「マリーナベイサンズ」に。乗り換えなしで移動。20分程度で到着する。1階と地下1、2階に広がる巨大ショッピングモールを散策し、フードコートでランチをとった後はスカイパーク展望デッキやマーライオンを見学して空港に戻っても時間を持て余すほどだ。
【マレーシア編】滞在10時間
マレーシアももちろんビザなしで、トランジットを楽しめる。今年1月からは入国前にデジタルアライバルカードの登録が必要になるが、待ち時間を短縮しスムーズに入国できる。クアラルンプール市内の観光ならアクセスが良く、クアラルンプール国際空港から直通の「KLIAエクスプレス」で市内中心部のKLセントラル駅まで約30分。ちなみに身軽に出かけるなら、到着ロビーにある24時間営業の「BUGGAGE SOLUTIONS」で荷物を預かってもらえる。
1日以内なら日本円で数百円程度だ。「KLIAエクスプレス」(空港からの往復100リンギット=日本円で約3300円)するが、プラス約660円でMRT線、LRT線、モノレールを2日間乗り放題できる。主要観光地ならこれらの路線で十分だ。
まずはLRT線でKLCC駅へ。徒歩5分程度でシンボルタワー「ペトロナス・ツインタワー」に到着。周辺を散策した後は、KLCC駅から4駅のPasar Seni(パサール・スニ)駅からすぐの「セントラルマーケット」に。配り物のお菓子や衣類、なまこ石鹼などの地元とお土産が揃う。空港には「KILA1」「KILA2」の2つのターミナルがあるが、少し早めに空港に戻って「KILA2」に立ち寄った。
ターミナル間は24時間無料のシャトルバスが運行されているので便利。地元スーパー「ジャヤグローサー」やファッション、雑貨、フードコート、マッサージと充実し、時間潰しに困らない。空港内の「FREE‗WIFI@KLIA」は速度も速く接続も良かった。
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